「いじめと自殺との因果関係が確認できなかった」と言う人の例

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※ 注意

 本コンテンツはいじめ自殺問題をあえて深刻に表現したフィクションです。実在の人物や団体とは関係なく、いじめ自殺の遺族を主人公としたストーリーを個人的な見解で書いたモノで正確な情報ではありません。その故に本記事を真実として拡散する事はフェイクニュースの拡散に当たる恐れがある為、情報の取り扱いは十分ご注意ください。

 また本コンテンツはいじめ自殺の遺族が学校の先生になっても『いじめではない』と言う例の続きになります。

「いじめと自殺との因果関係が確認できなかった」と言う人の例

 大手A出版。佐藤達のファクトニュースを書いたとされる出版社の編集室で鼻歌を歌いながら、今期の売上を眺めている猿渡編集長がいた。そんな気分が良い時にいきなりドアが開き、1人の社員が入ってくる。

「編集長!これは一体どういう事ですか!?」

 部屋に入ってきた犬飼は編集長に対し、2つの記事を机に叩きつけた。猿渡は記事の内容を見る。そしてしばらく一読した後、答える。

「・・・これがどうかしたのかね?」

「私の知り合いで教師をやっている人がいます。この『いじめではない』って、本当は『自殺は母親の虐待が原因で、いじめではない』の略文みたいじゃないですか!!」

 それを聞いた編集長は犬飼がこの記事がファクトニュースである事を知り、何故こんな記事になっているのかその真意を確かめに来ているのだろうと悟った。そして腕を組み、しばらく考えてあと、こう口にした。

「お前は”いじめと自殺との因果関係は確認できなかった”という言葉を覚えているかね?」

「質問に答えてください!!」

「・・・犬飼君。君はなぜウチがこんな誤解を招く書き方をしたのか?その疑問を知りにここに来ているんだよね?となるとそれに応える為には君がどのくらい法律や警察の捜査、そしてメディアの仕事を理解しているかで答え方が変わってくる。だから先ず、君自身が『いじめと自殺との因果関係』についてどのくらい詳しいのか?その理解度を知りたいから答えてくれないかね?」

「・・・ええ、知っていますよ。いじめ自殺が起きる度に学校側が『いじめと自殺との因果関係は確認できませんでした』と言ってごまかしていたのを。正直何で学校側は世間から反発されると分かっていながら、あんな嘘だと分かるような事を言うのでしょうかね?」

「そりゃあ、簡単だよ。『いじめと自殺との因果関係』なんて学校どころか、警察ですら証明が難しいのだから」

「は?どうしてですか?子供がいじめられているのを確認しているのですよ?」

「じゃあ訊くが、例えばある学校で生徒が自殺したとしよう。そして聞き込みをした結果、日頃からクラスメートからいじめられていた事が明らかになった。その場合、お前はいじめによる自殺だと書いて良いと思うか?

「当然でしょう。短期間によるいじめならともかく、日常的にいじめを受けていたのであれば、当人の心境は深刻だったはずです。いじめによる自殺だと書くべきです」

「じゃあ、それを記事にして発表したとしよう。しかしその後、その自殺した生徒は母親から虐待を受けていて、いじめの原因は親が衣服は洗わない事による異臭や、学校の活動で必要な道具を用意してもらえない事が原因だと分かった。とするとお前はどう思うかね?」

この瞬間、犬飼は固まる。

「そうなれば子供が自殺した原因はいじめというより、親のネグレクトが原因で学校生活に馴染めず、いじめが起こり、そして人生に悲観して自殺したという線が濃厚になる。さてそうなってくると、いじめが自殺の原因と書いたお前はどうなるかね?」

「・・・」

「親の虐待による自殺の可能性が高いのに、いじめを確認出来たからといって、いじめによる自殺とお前は書いてしまった。となるとその記事のせいで全く関係のなかった学校や生徒に社会的なバッシングが起こるだろう。そうなればそんな嘘の記事を書いたお前や出版社は訴えられる事になるだろうな」

「・・・いじめがあったからと言って、いじめが自殺の原因と判断した事は早計でした。しかしだからと言って、こんないじめが自殺の原因だと読者に誤解させるような記事を書いて良い理由にはなりません。いじめがあっても親の虐待が原因だと分かるような記事にするべきです」

「・・・いじめや虐待があっても、それが自殺の原因でなければどうするんだよ?

「は?」

「いいか、お前はいじめか親の虐待があれば、どちらかを自殺の原因に出来ると思っているのかもしれないが、実際、その2つがあっても、自殺の原因にはならない場合がある。例えば学校や親にもひどい仕打ちを受け、生きるのが苦しかったけれど、SNSで知り合った誰かから励まされて今日まで生きてきた。しかしある日『お前にも落ち度があるんじゃないか?』と心のない言葉を聞き、そのショックで衝動自殺した可能性だってある。となると自殺の原因をいじめ、または親の虐待が原因と書いたお前はどうなる?」

「・・・編集長。そんなのは特殊的な例です。確かにいじめや虐待があっても、それ以外で自殺した可能性があるのは分かりますが、本来、いじめや虐待があれば、それで自殺したと考えるべきなのでは?」

「・・・2016年度のデータだが、けど、警察庁の統計によるといじめが原因で自殺とされたのはたったの6件なんだぞ。しかも子供の自殺は320件中の。つまりお前は特殊的な例と言ったかもしれないが、いじめの場合、たった2%しかないから、いじめで自殺した事の方が特殊的な例なんだぞ」

「・・・6件。何でそんなに低いのですか」

「俺は教育委員会や警察関係者でもないから断言出来んが、自殺した理由は自殺した本人しか知らない。もしこれが殺人事件であれば、犯人を捕まえて『何で殺したんだ』と動機を特定する事が出来る。しかし自殺の場合、殺したのは自殺した本人なのだから、本人に問いただす事が出来ず、確実な証拠は得られない。つまり死んだ人間から証言を取るなんて、警察だって出来ないのだから、証拠不十分という事で『いじめが自殺の原因』と特定する事が出来ないのだよ」

「周辺の聞き込みで判断すれば良いではないですか!?」

「無論、自殺した子供の親や学校関係者、そして生徒などの聞き込みで、自殺した原因を絞り込む事は出来るのだろう。しかし所詮、状況証拠。証拠能力としては弱い。だから少しでも違う事象、例えば恋人にフラれた、試験に落ちたなど、自殺の動機になりえそうなモノがあれば『いじめだけが自殺の原因ではない』と見られる事になる。実際、子供の自殺の原因でトップなのは学業不振で32%、2位が親子関係の不和で23%、3位がうつ病の19%だ。だからいじめが自殺の原因と断定して報道する事は僅か2%の確率に賭けるのと一緒なんだよ」

「・・・」

「そして外れた場合の代償はあまりにも大きい。もし外れれば加害者のレッテルを貼られた学校や生徒からメディアに対し、損害賠償請求をされる可能性が高い。だからメディアは判断を誤った場合に備えて『いじめではない』と、いじめの隠蔽か、または本当にいじめではない、とどちらとも取れる表現を使っているわけだ」

 ・・・今まで生徒が自殺してから数日以内でこの手の記事が出回っていたけど、本来であればいじめがあったからと言っていじめだと断定せず、暫く調査をしてから報道すべきだったという事なのか。となるとメディアは今まで間違った報道をし続けたという事になる。

「全く、社会の連中に言ってやりたいよな?『なんでいじめに遭っていたからと言っていじめが自殺の原因なんだ?』って」

「・・・だったらそう言えばいいじゃないですか!?ありのまま起こった事、真実を報道するのがメディアの務めでしょう!?なのに何であなたはこんな語弊を招く記事を書いているのですか!?」

『いじめで自殺したとは限らない』と書くのも難しいからだよ。今はいじめ以外が自殺の原因と分かっているから『そう報道すれば良い』とお前は言っているが、実際の現場ではそれが曖昧のまま『いじめか、いじめではないのか?』と判断しなければならない。だからその場の雰囲気で『いじめで自殺したとは限らない』と書いた結果、『やっぱりいじめでした』になってしまえば、世間から誤報道と責められる。つまり真実を世の中に伝える為には自殺した原因を確実に証明する必要があり、しかし教育機関や警察でもそれは出来ない。言い方を変えればメディアも同じ立場であり、自殺の原因を正しく世の中に伝える事なんて無理があるんだよ」

 ・・・いじめと自殺との因果関係の証明。俺は当初、いじめがあれば、それが自殺の原因として断定しても良いと思っていた。しかし自殺というのは長年の蓄積だったり、衝動的なものだったり、様々な要因が重なって起こる為、いじめが自殺の原因と特定出来ない。つまりいじめ自殺はメディアからすれば真実を言いたくても言えない代物でもあり、世間に確実な情報をお届けしづらい案件と言えるわけか。となればメディアは一体どれだけのいじめ自殺を報道してきたんだ?

「どうだ?これで何で”いじめが自殺の原因”と語弊のある記事を書くのか分かっただろ?」

「『分かっただろ?』じゃないでしょ!だったらファクトニュースを使わずに事実が明らかになるまで報道を控えるべきなんじゃないですか!?」

「報道を控える?そんな簡単な話ではない。確かに事実がはっきりするまで報道を控えるのが正しいやり方だろう。しかし全てのメディアがそれをすると思うか?」

「どういう意味ですか?」

「例えば1つでも悪意のあるメディアがこのファクトニュースを書いた場合、このファクトニュースは嘘を言っていないのだから誰もその出版社を止める事が出来ない。つまり他社が報道を控えていたら、そんな記事を書いたメディアだけが独占状態で売れる事になる。悪意のあるメディアだけが1人勝ちする、お前はそれで良いと思うか?」

「・・・」

「これがファクトニュースが蔓延してしまう理由だよ。世間の連中は真実を知らないから、この手の記事を真実だと思って買ってしまうし、そうならないよう各メディアもファクトニュースを出して対抗せざる得ない。今、メディアにファクトニュースが蔓延してしまっているのは悪意のあるメディアが独り勝ちしないようにする為の対抗策で、ファクトニュースを止められないのが背景にあるんだよ」

「・・・ならせめて間違った報道をしてしまったとお詫びするべきなのではないでしょうか?」

「間違った報道?いいかファクトニュースは嘘をついていないのだぞ。詫びを入れると言っても嘘はついていないのだし、自殺の因果関係が分からないのだから、間違ってるってどうやって伝えれば良いのかね?」

「・・・」

「更に言えば、他のメディアもやっているのに自分達だけ詫びれば客離れが起きて、悪意のあるメディアに客を持っていかれる事になる。お前はそれで良いのか?」

「・・・」

「もっと言えば、その修正報道も1回きりで済めば良いが、子供の自殺は年間約300件起きている。つまりメディアはとりあえずファクトニュースを使って、その場しのぎをし、そして暫くしてから詫び入れ続ける。それを年間300回も繰り返すんだ。お前はそんなメディアの情報を買うか?」

「・・・」

「いいか?このいじめ自殺で難しいのは誰もいじめと自殺との因果関係を証明する事が出来ないのが大きな問題なんだ。つまり俺が調査せず、適当に『いじめで自殺した』なんて言っても誰も否定する事が出来ない。科学的根拠を提示出来ないのだからな。そして国民はそれを見て『誰も反論しないって事は間違っていないって事なんだろ?』と捉え、間違った印象が先走ってしまう。

 いじめ自殺が起こる度にメディアはいじめか、いじめでないか?という2択に迫られる。そして外れてしまえば、最悪の場合、学校や1クラス分の生徒の賠償金が発生する。これを続けていけばいずれウチは破産する。そしてこの問題を抱えているのはウチだけではなく、他社も同様だ。となれば安全策として大抵のメディアがファクトニュースを使うのは最早自然な流れなのではないかな?」

 因果関係を証明する術をメディア、いや誰も持っていない。なのにメディアでは不幸な事にファクトニュースを先に出した方が評価される。世間の連中がいじめと自殺との因果関係の証明の難しさを理解していないせいで『いじめではない』と鵜呑みにし、そして学校の隠ぺいとして叩かれる。これではメディアが原因で問題を更に深刻化させているようなもんじゃないか!?

 なら報道しない方が良いのか?いや、だったら本当にいじめを隠蔽するような事件が起きた場合はどうする?遺族が隠蔽だと嘆いているのに、保身の為に報道しないなんてあり得ない。真実を世に伝えるのが報道機関の務めならこの因果関係の問題を解決し、健全な報道が出来るよう、変えていかなければならない!!

「・・・猿渡編集長。今、メディアで起こっている問題は分かりました。ただそれでもメディアはこの問題を解決しなければなりません。先ほど320件中6件しか、いじめと自殺との因果関係が証明されていないとおっしゃいましたが、逆に言えば6件も証明出来ているのです!!」

「だから?」

「だから、メディアの活動としては脱しますが、その6件を参考に今後、いじめと自殺との因果関係を証明できるよう、世間や国に訴え、法律等のインフラ整備をしていくのです。そうすればいつの日か根拠のある報道が出来るようになり、メディアの抱えている問題は解決できます。今から課外活動として実施できるよう、企画を練りましょう!!」

 そうだ!希望はある!今はファクトニュースによって冤罪被害を起こしているが、こんなやり方、いずれ世間の人達に知られるし、何よりも亡くなった子供が報われない。だからこそ、どうして子供が自殺する事になったのか?それをちゃんと伝える為に、その6件の成功例を参考にファクトニュースでなくても大丈夫な記事を作れるようにするしかない!!

「遺書があったからだよ」

「え?」

「遺書があったからいじめによる自殺だと認定出来たんだ。『私は○○君のいじめが辛くて自殺します』とはっきりと書いてな。つまり君の言う、いじめだと証明出来るようにするってのは、これから自殺する子供に『自殺する前に誰にいじめられたのかハッキリ分かるように遺書を書いてね』とそんな指導をするようなものだ。お前はそれで良いと思うか?」

「い、いえ、それは・・・」

「ダメだよな。普通、自殺したい生徒がいれば、なんとしてでも自殺を思いとどまらせるべきだ。なのに逆に遺書の書き方を教えるなんて、まるで自殺を促しているようで生活指導の面でも間違っている。仮に再発防止の為、遺書の書き方を教えるなんてなれば世間は反発するだろうな。『自殺の練習をさせられた』ってな」

 『自殺の練習』・・・この言葉は忘れたくても忘れられない。あの大津市で起こったいじめの1つ『自殺の練習をさせられた』といういじめ。これを初めて聞いた時はとても人間がやる事じゃないと思った。なのに今、俺は間接的にとは言え、再発防止の為に自殺の練習とも取れるような事を言ってしまった。そんな事を言ってしまえば世間からバッシングされるだけでなく、自殺する子供を増やしかねない。しかし・・・。

「し、しかし本当に遺書くらいしかいじめと自殺の因果関係を証明する方法はないのですか?周辺住民の聞き込みや、生徒のアンケート調査など、ちゃんと調べればいじめで自殺した原因なんて分かりそうな気がするのですが?」

「遺書以外にも、日記に『○○君にいじめられて死にたい』と書かれていた場合やカウンセリングなどで医師が『○○君にいじめられて死にたいと言っていた』など公式記録が残っていれば認められる場合がある。しかし遺書などがあっても、それでファクトニュースが解決するとは思わないな」

「どうしてですか?」

「さっきも話したが、自殺は誰かによって直接殺されたわけではないから、物的証拠がない。それに事件の中には母親が子供に遺書を書かせたとも思えるケースもあって『遺書があっても自殺したとは限らない』という判例も出ている。だから遺書があったからと言って、自殺の原因になるとは限らないし、メディアは以前、遺書があったせいで『いじめが自殺の原因だ』と大々的に報道してしまったせいで、生徒や学校にバッシングを誘発させた事がある。その反省も踏まえ、遺書があったからと言って、いじめが自殺の原因と強く言うのも難しい状態なのだよ」

「・・・」

「だから自殺原因を特定する方法として裁判しかないのだが、いじめは現行法では犯罪では無い為、刑事裁判ではなく、民事裁判になる。となると被害者が先ず裁判を起こすかどうかも焦点になるが、その判決でさえも、いじめによる自殺が濃厚なのに『いじめ以外の自殺の原因になりうる』と判決が出る事もあるからややこしい」

「・・・何でいじめによる自殺が濃厚なのに、いじめではないみたいな判決が出るんですか?」

「何度も言っているが自殺の原因の証明というのは難しい。これは学校、メディアだけに問わず、裁判でも同様だ。そして法的に”いじめが自殺の原因ではない”と証明する為には『自殺した生徒はいじめを受けた事がない』『亡くなった子はいじめを全く苦にしていなかった』など証明する必要がある。無論、そんな人生を送っている生徒は稀だろうし、だから少しでもいじめらしきモノが発覚したら『いじめも自殺の原因にもなりえる』となる。更には先の320件中の6件しか『いじめが自殺の原因』と出ていない。それではあまりにも低すぎるし、そんな少ない確率にかけたくないという裁判官の本音というモノがあるんじゃないかな?」

「・・・しかし、大津市のいじめ自殺はいじめが自殺の原因という判決が出ています」

「ああ、俺もあの判決には驚いたよ。俺はその事件に関わった事がないから、これはあくまで推測だが、今まで話した通り、自殺は直接誰かに殺されたわけではないから、状況証拠だけで判断される事になる。だから本来なら決定的な証拠がない中で裁判が行われ『状況証拠しかなく、いじめが自殺の原因とは言えない』と判決が出るのかな、と思っていたが、正に遺族が望む判決となり、画期的な判決だったと言える」

「あれほど、あからさまないじめがあったにも、かかわらずですか?」

「司法というのは雰囲気だけで判断するわけにはいかないのだよ。例えいじめ加害者の存在があったとはいえ、そいつに罪をなすりつける本当の犯人もいるかもしれない。だから状況から見て明らかに黒でも、公正に判断する必要があるんだ。まぁ、それでも今までのいじめ自殺は保守的になり過ぎて、いじめと自殺との因果関係を認めない判決が目立ってきたから、大津市の判決を機に司法の在り方が変わるかもしれない」

「なら問題が解決した?という事で宜しいのでしょうか?」

「何を言っている。あくまでも大津市のいじめ自殺においては、だ。実際、いじめによる自殺と科学的に証明出来るようになったわけではないんだ。なら今後生徒が自殺しても『いじめと自殺との因果関係は確認できなかった』と言う学校は出てくるだろう。となれば世間の連中は『大津市の事件から全然成長していない』と反発を強めるだろう。

 となれば結局、メディアはいじめ自殺に対し、どう書けば良いのか迷うだろうし、”いじめではない”と記事を書く為には、多分5年後の判決を正しく予想するなど、正に未来予知と言える神業、そう、年間320件全て百パーセント的中させるほどの神業が必要だ。結論から言ってそんなの無理だし、となれば結果的に損害賠償を支払うリスクを避ける為、やっぱりメディアはファクトニュースを使うしかない、という結論になるだろうな」

 ・・・なぜメディアは『いじめではない』と語弊のある報道をするのか?

 最初のうちは編集長が私利私欲で悪意のある記事を書き、それに気づかず、他のメディアや世間が鵜呑みにしてしまった、と思っていた。しかし実際はいじめと自殺との因果関係が証明出来ないせいで、誰も『いじめが自殺の原因』と書けない、と報道と法律的な問題を知った。そしてそれを止める術もない。その結果『いじめではない』と語弊のある記事が常に出続ける状態になってしまい、世間に『学校の隠ぺい』と思える状態が続いているわけか。

 ・・・そんなの受け入れられるわけにはいかない!!真実を伝えるのが報道機関の使命であるはずのに、語弊を与える報道をして、無実の人間の人生を滅茶苦茶にしている。そんなの許されるはずがない!!

 編集長の言いたい事は分かった。しかしだからと言ってこのまま放置して良いというわけにはいかない。だからこの問題を解決する方法として俺は今、内部告発を考えていた。無論、そんな事をすれば俺もただでは済まないだろう。しかしメディアの悪しき風習を正すには今起こっている事を世の中に伝え、間違った認識を正す事が必要だ。

 ただそんな風に考えていた時、ふと犬飼は1つ気になる事を思いついた。

なぜ俺より先に内部告発する人がいなかったんだ?

 このいじめ自殺の問題はもう前々から起こっている。となれば俺より先に、現場で取材した取材班の中にはとっくに事の真相に気づいているはず。となれば告発しようと考える人が既に現れて動いていてもおかしくない。皆、保身に走って告発しなかったという事か?いやしかし流石に今までの年月の長さを考えると1人くらいいてもおかしくない。だって沢山の子供の人生を蔑にする事案だ。正義感のあるジャーナリストも俺は見てきたし、その1人が行動を起こしてもおかしくない。しかし俺の記憶を思い出す限り、そんな話は思い出せない。一体なぜ内部告発する動きがないんだ?

ファクトニュースに対し、内部告発者が出たらどうなるのか?

続き↓

3章 いじめ自殺の加害者を擁護する人の例