パワハラ対策をする会社と管理職の例

シェアする

パワハラ対策として会社はどんな風にすれば良いのか?

 会社の離職率や社員の休職の多さなどパワハラが会社に蔓延している場合、悪評によるブランドイメージの低下や、会社の生産性を悪化させるなど経営自体が危うくするリスクが秘められています。その為、会社でパワハラが蔓延している場合、どのように対処すれば良いのか?その方法を知りたい。そんな人は沢山いると思います。

 出来る事ならパワハラが起こる原因を知って、それに対しどのように対処すれば良いのか?パワハラが起こる原因の調査方法と根本的な解決策。その一例が欲しいと思われます。

 ここでは実際に会社にパワハラが蔓延し、急遽現場に送られた管理職の視点でパワハラ問題の対策について説明したいと思います。

そもそもパワハラとは何なのか?

 ここが噂のパワハラが多い部署か。

 離職率やネットの書き込みなどの酷さから本社から改善を求められ、急遽出向する事になった。そして社員との挨拶を済ませた後、まるで俺が何でここに来たのか忘れているかのように社内には罵倒が飛び交い始めた。

「何でお前はメモしていないんだ!!」

「お前は何回同じミスを繰り返せば気が済むんだ!」

「何で俺に相談せず、勝手な事をするんだ。馬鹿野郎!!」

 パワハラの定義は色々あるが、殴ったり、または「死ね」などの身体的苦痛や精神的苦痛が主なパワハラだ。まぁ、それでも世の中には叩かれた事で成長する人もいて、パワハラの定義は難しいが、要は相手が傷ついているかどうかが焦点になってくる。

 だからこそ退職する原因が何なのか、本人達に確かめないといけないのだが、退職する人達は立つ鳥跡を濁さずなのか、何も言わずに去っていく。のちの話だが、去った人の話によると「パワハラ上司に伝わるかもしれないと思った」と本音を言うのを避けていたらしい。直属の上司である以上、部下の連絡先は知っており、退職してからもしつこく何かしてくるのではないかと恐れていたようだ。退職後でもパワハラを口にしない理由は分かったが、これでは原因が分からず、パワハラ問題を解決しづらい。

 パワハラによる離職は会社にとって死活問題だ。パワハラによって社員が辞めれば人手不足で仕事が回らなくなったり、一人当たりの仕事量が増え、鬱やパワハラが更に加速し、退職者が増える事に繋がりかねない。だからこそ、俺はこの現場にはこびるパワハラを解決し、二度とパワハラが起きないような職場作りを目指さないといけない。果たしてそれが出来るかどうか不安だがとりあえず出来るところからやろうと思う。

 ってなわけで、1つの方法として業務終了後、全社員に進捗報告書を書いて貰う事にした。パワハラ上司から訊いても「あいつは仕事が出来ない」「愛のムチ」など感情的な情報ばっかりで俺の知りたい情報が手に入らない。だから1つの方法として部下達の悩みなどを訊ける環境作りが大事だと思った。無論、上司を通さず、部下の声が直接俺に伝わるよう、直に提出する方法を取った。

 そして1ヶ月が過ぎ、何でこの現場でパワハラが起こっているのか見えてきた。その為、上司の部下に対する接し方を変える為、俺は次に上司の意識改革に力を入れる事にした。

パワハラ上司の意識改革をする管理職の例

 そして俺はパワハラ上司達を個別に呼ぶ事にし、まぁ、人によって言い方は違うが大体同じだったので、似ている部分を組み合わせると以下のような会話になる。

「ねぇ、君、君はどうして、パワハラまがいのことをしているの?」

「え?」

「どうして、パワハラまがいのことをしているのかと聞いているんだ。俺1ヵ月ほど君の部下への教育を見てきたけど、ずっと怒鳴りっぱなしじゃないか、あれって一体どうやったら部下は成長すると思っているの?」

「それは、怒られれば、悔しいと思って、何が何でも仕事ができるように頑張ろう。と思うからじゃないですか?」

「でも、その結果ほとんどの人たちは頑張るという選択肢より、この職場から離れる選択をしているよね。それはどうしてだと思う?」

「それは、彼らに根性がないからでしょう。実際あんだけ罵倒されてるのに途中で仕事を放り出すだってなんて心が軟弱なんじゃないですか?」

「ではそんな軟弱な人がまた新しく入ってきた場合、また君は同じ結果を出すのかい?」

「そ、それは・・・」

「世の中にはダメな人がいるけど、そんな人でも会社の即戦力になったりする人もいるよね?その人は一体どうやって成長したのかイメージつく?」

「・・・」

 そう、パワハラ上司の1つの特徴として『怒ればいずれ解決する』と本当に信じている所がある。しかし怒るというのは決してだめな部下を直す特効薬ではない。部下からすれば見返すという選択肢もあるが、逆に退職するという選択肢もある。そしてこの職場の人達は後者を選択しており、この現場の上司はその考えが抜けている。俺の経験上、怒って効果があるのは、部下がサボろうとしていたり、本当はできるのに手を抜いてしまったりなど、既に実力が備わっているのにそれをやろうとしない時くらいだ。

 しかしこの上司達はまだこの仕事を始めて間もない人向かってパワハラまがいな事をしている。そうなればどうなるか?それはもう高い確率で退職や異動、または休職という手を取るだろう。それは言い方を変えれば新戦力が成長しない職場と言える。だからパワハラを無くさないといけなくて、パワハラ問題を解決するためにはパワハラ上司の教育に対する意識改革が必要だと俺は見ていた。

 しかしパワハラ上司はこれに対し反論する。

「しかしアイツはメモを取らないし、仕事は遅いし、同じ間違いをするし、正直怒るしかないのではないでしょうか?」

 と部下の仕事ぶりに問題があるから怒らざる得ない、と言ってきたのだ。確かにこの1ヶ月の様子を見る限り、部下のミスが目立つ。だから当初は上司より部下の方に問題があるのでは?と俺は見てたのだが、今は違う。

「君、『言った』『伝えた』の違いって分かる?」

「え?」

「君の仕事を見る限り、仕事内容を全てを口頭で伝えているよね?ちゃんと部下が自分の言った事を理解したかどうか確認している?俺からすれば君は『言ったつもり』になっていて『伝えていない』のでは?とそう思っているんだ。君はちゃんと部下がメモを書き終わるまで待ってたりとかしているのかい?」

「も、もちろんです。ちゃんと部下が書き終わるまで待っています」

「じゃあ、君は部下がメモを取っているのを直で見ているわけだよね?なら何で君は部下がメモの書き忘れた事に気づかないんだ?」

「そ、それは・・・」

 そう言えば何でだ?みたいな顔をしている。どうやらこの上司は本当に自分の話している内容が部下に伝わったと信じているようだ。

「俺が見てて気になったんだけど、君は確かに業務内容を口で説明している。しかし聞いている人は手書きだ。スピードは明らかに違うし、君は説明に夢中になると相手の事をお構いなしに話を進めてしまう所がある。これでは相手が質問をしたい場合、タイミングを逃す事になるけど、違うか?」

「いえ、でしたら話が終わった後、質問すれば良いのでは?」

「そんな簡単な話ではないんだよ。新人からすれば何も分かっていない状態。そんな状態で一気に説明されても分からないし、質問をしたくても『何を質問すれば良いのか分からない』状態に陥っている。つまり質問したくても出来ないし、後にどうしようも出来なくなって、君に相談し、その度に「何で分からないんだ」みたいなやり取りを繰り返しているように見える。つまり部下のメモの書き忘れというより、メモをしても分からない君の説明の仕方に問題があると見ているんだ」

「・・・」

「君は時折『1回説明しただろ』と言って、質問に答えていない事もあるよね。正直、俺は君の最初の説明だけでなく、その後の問答においても問題があって、部下は曖昧な状態で作業せざるをえず、ミスを連発する。そういう風に見えているだけど違うか?」

「しかし、それは話の内容が理解出来ない部下の方に問題があって・・・」

「俺は仕事内容を理解させてないまま仕事をやらせているお前に問題があるのでは?と言っているんだ!!仮に部下が仕事を理解せず、質問もせずに作業していたら、俺はそいつを注意する。しかしこの1ヶ月間の君と部下のやり取りを見ていると、部下はちゃんと質問しているし、どちらかと言えばお前がちゃんと質問に答えてなかったり、バカじゃないの?と言って愚痴ばかり言って、部下の貴重な作業時間を潰したりもしているお前の指導の方に問題があるのでは?と言っているんだ!!正直、必要な情報を与えず、短い時間で仕事をやらせているようで、部下にミスを誘発させているように見える。そしてお前は注意だけしかしない。これじゃあ、いつまで経っても改善されないじゃないか!?分かるか?言っていることが?」

 目の前の上司はただ黙っていた。これはこの現場に限った事ではないのだが『ミスをしたら全てその人の責任』と考える人が結構いる。パワハラ上司の特徴なのかもしれないが、説明の仕方に不備があったり、サポートの仕方に問題があれば当然部下はミスをする。しかしそのミスを単なる部下のミスとしか捉えず、自分のフォローの仕方に原因があるとまでは考えない。

 目の前の上司の場合、説明が下手で一度説明すればそれで終わりと考える人だ。その為、部下は仕事の内容を理解出来ず、そしてミスが出ても上司はただ怒るだけ。これが部下のミスが一向に改善されない理由だと見ていた。これじゃあ、分からない状態を放置し、部下が必死で助けを求めているのに、逆に追い詰めるような事をしている上司の方に問題がある。だからこそこの上司のパワハラ問題を解決する為には部下への接し方を改めさせないといけない。

 そして最初の説明の不備だけでなく、その後のフォローについても言及した。

「あと後出しも多い。正直、君の命令は部下がある程度、作業進めた後、君の指示に疑問を抱いた部下が質問すると「あー、この場合こうやって」と最初の説明とは違うやり方を言ってくる。部下からしてみれば『じゃあ、今までやってきた作業は正しかったのか?』と、見直しが必要になってきて、今までの作業のやり直しが発生する。違うか?」

「・・・」

「しかも『何でこのやり方をしないといけないのか?』君はその説明を省いている。これだと部下はどういう時にこのやり方をしないといけないのか?その辺の判断が出来なくて、最初の説明のやり方が正しいのに後出しのやり方をしてしまったり、または後出しのやり方が正しいのに最初のやり方をしてしまってミスが出てくる。だからお前は『何で説明したのに同じ間違いを繰り返すんだ!』みたいになる。違うか?」

 はっ!と何かに気づいたかのような顔をし、どうやらパワハラ上司は何で部下が間違いを連発するのか、何となく分かったようだ。

「そして上司に怒られないよう部下は何度も見直す。しかし君が正しく教えていないから見直しも正しく出来ない。そして部下は調査や確認作業に時間を費やし、直ぐ終わる仕事でも長引いてしまい、だから「仕事が遅い」と君は部下を責める事になる。正直、部下の聞き方というよりもただ表面的なやり方だけしか教えていない君の方に問題があると見ているんだ」

「・・・」

「まぁ、仕事を割り当てる以上、始めの段階で、最初から最後まで正しい説明をするのは難しいだろう。しかし管理職の人間はそれが求められる。でないとこの現場のように言われた方はメモを書いても正しく理解出来ず、事あるごとにミスをし、そして上司である君に叱られ続ける事になる。これだと君はパワハラまがいな指導をしているって事になっちゃうよね?」

「・・・」

「となるとやはり改善すべきは部下というよりも、上司である君の方になる。少なくともただ叱り続けるやり方ではいけないというのは分かるよね?」

「はい・・・」

 この返事が欲しかった。世の中にはどんなに妥当な理由を並べても、認めない人がいる。ただ俺が会ってきた上司を見る限り、どうやら自分のミスを認める人であるようだ。

 部下を叱り続けて、改善されるのを待つ、みたいな指導が存在するけど、上司の指導が誤っていれば、部下は改善したくても出来ない立場に立たされる。退職、うつ病コースだ。そうならないようにする為にも、上司が正しく部下を指導する、そんな職場作りを目指さないといけない。

パワハラではない指導とは具体的にどんなモノか?

 パワハラまがいなの指導が如何に効果を生まないかは説明した。そして呼び出された上司の殆どが「申し訳ございません。以後気をつけます」と言って反省していた。良い傾向だ。しかしこれでは終わらせない。

「自分のやり方に不備があった。それを認めてくれるのは嬉しいよ。俺も努力した甲斐があるからね。ただもう少しだけ付き合ってくれる?」

キョトンとする上司を無視し、俺は話を続ける。

「君は反省したと言ったけど、では具体的に今後どのように部下に接していこうと思っている?」

「そ、それは・・・」

「例えば君は部下がメモを取っていない事に腹を立てていたよね?となると今後もメモの書き忘れのような不備が起こると思うけど、その時に君はどうするつもりなの?」

「・・・」

 目の前の上司は黙ったままだ。そう、反省しても、改善策が見出せず、いつも変わらないやり方を続ける人もいる。またいつもと変わらないパワハラ指導に戻れば意味がない。だから俺はパワハラではない、かつ部下が結果を出しそうな指導を教える必要がある。

「君はミスをしたら怒る方法で問題を解決してたよね?でも今までの話通り、効果のない叱責は逆効果になる。だからこれは俺からの提案なんだけど、部下の仕事が出来たら『ありがとう』とか『サンキュー』とか何でも良いから褒めてくれないか?」

「え、そんな、”感謝の安売り”など本当に感謝している時の価値が薄れてしまいます。やはり立派な仕事を成し遂げた時にこそ『ありがとう』と言うようにすべきではないでしょうか?」

「なら『頑張っているか?』とか励ましの言葉などを言えばいいのでは?少なからず君は社員をやる気にさせるような事をしていない。いやどちらかと言えば怒るだけだから、逆に憂鬱になるような指導になっている。だから部下の気持ちに応える為にも褒め言葉や励ましなどで社員のやる気が出るような指導をしないといけない」

「はぁ・・・」

 目の前の上司は何か乗る気がしていない。今までやった事のない事だから不安を抱いているのだろう。しかし怒る方法で指導している以上、やり方を変えないといけない。まぁ、だからこそ褒めるという指導を勧めているのだが、ただやり方を変えるだけでは意味がない。

「お前はこの話を聞いて、ただ怒るやり方を変える為だけに『褒める』という行為を俺が勧めている、と思うかもしれないが、そういうわけではない。俺がこの現場で足りないと思ったのは『この会社の為に頑張りたい』と社員が会社の為に貢献したいと思える環境だ。

 怒られているから社員は辞める。それも離職率が高い1つの原因だろう。しかしだからと言ってただミスなく仕事が出来るようになっても『俺は何の為に働いているんだろう?』と思って心機一転し転職をする可能性だってある。つまりこの会社で働きたいと思える何かを作らないと結局離職率は高いままだ。

 そこで離職率が低い会社について色々と調べたんだが、無論、給料が高いというのも1つの理由だが『自分の仕事が何かの役に立っている』という承認欲求も必要だと見ている。

 人というのは面白いモノで例えば取引先で「君のおかげで業績が回復したよ」「君のおかげで人がたくさん来るようになった」と自分の提案が取引先にとってプラスになると分かるともっと頑張ろうと考える。本来、仕事とは辛いモノ。しかし辛いはずなのに、頑張った分、人から感謝されるようになれば「もっと頑張ろう」と考えるようになり、更に仕事に励むことになる。俺が見る限り、この現場にはそれが足りないと思っている」

「は、はぁ・・・」

 目の前の上司は困惑した印象だ。まぁ、ウチのようなIT会社の場合、客を喜ばせるというより既存のシステムのメンテナンスをするのが目的だ。いつも通り動かせるようにする。それはある意味、いつもと変わらない作業をするという意味で、やりがいを見つけるのが難しい業種と言える。ただだからこそ、俺は仕事ではなく、上司についていきたいと思えるような環境作りが必要だと思っている。

「まぁ、この現場はメンテナンスを主体としたビジネスをしている。中々楽しいと実感する事は難しいだろう。だからこそこの現場には仕事ではなく『この人についていきたい』『この人のようになりたい』と、そう思えるような存在が必要だと思っている。まぁ、言い方を変えればお前自身が憧れの存在になるって事かな」

 何を言っているんだ。この人?みたいな顔を目の前を上司はしている。

「まぁ、いきなり言われても何を言っているんだ?みたいにしか聞こえないだろう。しかしこの現場には社員を定着させる求心力というモノが必要だ。仕事内容で難しいのであれば、人としての魅力で定着させるしかない。

 だから先ず君には部下を褒める所から始めてほしい。そうするとその部下が一体何に対し、やりがいを見出すのか、少なからず個性というのが見えてくる。

 大抵、人というのは優しくされたら、その人についていきたいと思うはずだよ。そうやって部下に気配り出来ると、この人の期待に応えたいとか、恩を返したいとか考えて真剣に仕事に考えるはずだ。それに君が仕事のやり方やコツを教えて、仕事が出来るようになれば自信がつくし、正に君が求めていた戦力となる人材に成長するんじゃないか?」

 はっ!と何か理解したかのような顔をした。どうやら今自分に必要な事が分かったのかもしれない。だからもうこれ以上、何かしら言うのを止め、あとは上司に任せる事にした。