いじめ自殺の遺族が学校の先生になっても『いじめではない』と言う例

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※ 注意

本コンテンツはいじめ自殺問題をあえて深刻に表現したフィクションです。実在の人物や団体とは関係なく、いじめ自殺の遺族を主人公としたストーリーを個人的な見解で書いたモノで正確な情報ではありません。その故に本記事を真実として拡散する事はフェイクニュースの拡散に当たる恐れがある為、情報の取り扱いは十分ご注意ください。

もし『いじめ自殺の遺族』が『いじめ自殺の担任の先生』だったら

「親父!これは一体どういう事だ!!」

息子、タダシは持っているスマホを仏壇に向かって手を合わせている親父に向けて見せてきた。そこにはとあるメディアの記事が表示されており、こう書かれていた。

○○県立中の中学生がネット上に生徒に暴行を加える動画がネット上に流出。

動画には1人の生徒がもう一方の生徒に一方的に暴行を加え、もう1名がその2人を撮影していた。ネットではこの動画が拡散し、炎上している。AA中学の○○校長によると、この動画に写っている生徒2名と撮影している1名に事情を聴いたところ「間違いない」と動画撮影に関わった事を認めている。

加害生徒は保護者から叩かれ、また被害生徒の保護者は「あまり大ごとにしないでほしい」「被害届は出さない」と言っている。

○○校長は「いじめではない」と発言している。

 変な言い方だが、よく見る学校のいじめ自殺の隠ぺい記事だ。どうやらとある学校でいじめが起き、そのいじめ動画がネットに流出したようなのだ。俺もその動画見てみたけどあまりにも胸糞悪くなる動画だ。動画開始直後、2人の生徒が現れて、いきなり1人の生徒がもう一方の生徒を殴ったり、蹴ったりしている。しかも3分間ずっとで、やられている方は反撃せず『助けて』『やめて』と言ってるだけ。そんなあまりにも一方的ないじめなのに撮影者はいじめを止めるどころか、笑ってさえいた。最早これは撮影者と共謀したいじめ動画だというのが分かった。

 そして更に酷いのがこんなあからさまないじめ動画があるにもかかわらず、学校はまた「いじめではない」と言ってきているのだ。

ただ問題はそれだけでは終わらない。更に1か月後、実はこの動画に写っていた生徒が自殺したというニュースが流れた。タダシはスマホを操作し、また別の記事を親父に見せた。

 ○○県立中学2年の男子生徒(14)が自殺したとして、生徒の通っていた学校の校長らが記者会見した。

発表によると自殺した生徒は複数の生徒から暴力を振るわれていたと発表した。またこの自殺した生徒は先月投稿された暴行動画で撮影された生徒の1人で、動画と自殺との関連がないか調べている。

また関係者話によると自殺した生徒は亡くなる前日、複数の生徒から無視された上、水をかけられ、着替えているところを複数の人によって服を奪われたと話している。

加害者とされる生徒達は「いじめているつもりはなかった」と話しており、校長は「なぜ自殺したのか分からない」と話し「いじめが原因ではない」と話した。これら情報を受け、学校側は第三者委員会を設置して、自殺した男性生徒に対しての自殺の原因について詳しく調査する方針です。

 と『自殺した生徒は先月投稿された暴行動画で撮影された生徒』とぼかしているが、この状況で自殺するのは動画でいじめを受けていた生徒だというのは明白である。つまり動画でいじめを受けていた男子生徒が1か月後、自殺し、なのに学校はまた『いじめが原因ではない』といじめによる自殺だと認めなかったのだ。

 これほどの動かぬ証拠がありながら、誤魔化し通せると思っているのかと、もうタダシはこの学校の対応に怒りを覚える。この学校だけでなく、他の所も度重なるいじめ自殺に対し、『いじめではない』と言い訳してくる。最早この国の教育機関には絶望しか感じない!

 そしてその隠ぺいに加担している1人が目の前にいる。ウチの親父だ。ウチの親父はこの記事に書かれている○○県立中学校の先生で、記者会見の際、一緒に出ていたのだ。つまりウチの親父はいじめ動画の存在を知りながら『いじめではない』と言い訳し、自殺した原因を隠ぺいした事になる。

 本当ならこのまま殴りかかってやりたいところだが、だがどうしても気になる事がある。というのもウチの親父は単なる学校の先生ではなく、10年前に俺の弟、つまり親父の息子、マモルをいじめ自殺で亡くした、いじめ自殺の遺族でもあるのだ。俺達も当時学校側から『いじめではい』と告げられ、加害者らしき生徒を罰する事ができず、こちらの泣き寝入りで終わっていた。だから親父はその事件を境に『いじめのない学校を作る』と言って学校の先生になったのだ。

 俺自身、親父が学校の先生になったと聞いた時は『親父がいればいじめによる隠ぺいは起きないな』と安心したのだが、それがこれである。10年前、弟をいじめで失い、そして当時の学校の対応に理不尽な思いを受けていたのに、なぜ親父は記者会見で「いじめではない」と発表したのか?俺はどうしても親父の真意を知りたかった。マモルに線香をあげ終わった父、佐藤はようやく口を動かす。そして

「あれは・・・いじめではない」

 と、かつて子供の自殺を隠蔽しようとした学校や先生と同じ言葉を口にした。

いじめを認めない学校や先生の例

「何でだよ・・・親父!?」

「じゃあ、訊くが、お前は先ほどから、あの動画を一方的ないじめ動画と言っているその動画はいじめている動画か?それともいじめにあって反撃している動画か?どっちだ?」

「えっ?」

その言葉を聞いて改めてもう一度動画を見てみる。

 親父に言われてみると確かにこの動画は一方的に相手を叩きまくっているが、動画が始まった瞬間、叩き始めているせいで、何で相手を叩いているのか判断出来ない。親父の言葉を信じるのであれば、これは弱いモノいじめではなく、いじめに対する反撃動画になる。それは言いかえれば一方的に暴力を振るっているのが実は被害者で、そして叩かれている生徒と撮影者が加害者とも受け取れる。つまり俺は、いや世間はこの一方的に暴力を振るっている動画を見て、加害者と被害者を逆に見てしまっていたという事なのか?

「つまり親父はこれがいじめの動画ではなくて、いじめにあって反撃している動画だと言いたいのか?」

「ああ、この動画でいじめられている生徒は本当は撮影者の仲間で『俺達に逆らったら、ネットにアップするからな』とこの生徒を挑発していたんだ。しかし結果的にこの子は耐えられず反撃してしまい、それがネットに出回ってしまった」

「い、いや待てよ。親父!じゃあ、この記事は何なんだよ」

○○県立中の中学生がネット上に生徒に暴行を加える動画がネット上に流出。

動画には1人の生徒がもう一方の生徒に一方的に暴行を加え、もう1名がその2人を撮影していた。ネットではこの動画が拡散し、炎上している。AA中学の○○校長によると、この動画に写っている生徒2名と撮影している1名に事情を聴いたところ「間違いない」と動画撮影に関わった事を認めている。

加害生徒は保護者から叩かれ、また被害生徒の保護者は「あまり大ごとにしないでほしい」「被害届は出さない」と言っている。

○○校長は「いじめではない」と発言している。

「お前だって聞いた事があるだろ?・・・それはフェイクニュースだ!」

「フェイクニュース?いやいや、嘘だろ?」

 もう一度スマホを見てみる。記事は大手メディアの名前が書かれていて、メディア業界の中でも有名な会社だ。それがフェイクニュース?正直どうしても信じられない。ただだからと言って完全にマスコミの事を信用できるかと言われればそうでもない。

 それに俺は親父を信じたかった。

「お、おれは親父を信じる。つまりメディアの連中はよく確かめもせず、この暴力動画をいじめ動画だと決めつけ、被害者と加害者を逆に報道してしまったという事なんだな。でも何故なんだ?親父の話が本当ならメディアは明らかに間違った報道をしている。だったらなんで親父は、いや学校は世間に対し『これはフェイクニュースです』だって訴えないんだ。でないと俺だってここまで親父を疑う事なんて・・・」

「嘘か・・・まぁ、フェイクニュースという言い方はもしかしたら間違っているのかもしれないな。正しくはファクトニュースと言ったところか」

「ファクトニュース?」

「ああ、お前は、なんで嘘だと言わないんだ?と思っているかもしれないが、その記事をよく読んでみろ。何処に嘘が書いてある?

・・・どこに嘘が書いてある?いやいや、嘘じゃないか?まぁ、前半の

○○県立中の中学生がネット上に生徒に暴行を加える動画がネット上に流出。

動画には1人の生徒がもう一方の生徒に一方的に暴行を加え、もう1名がその2人を撮影していた。ネットではこの動画が拡散し、炎上している。AA中学の○○校長によると、この動画に写っている生徒2名と撮影している1名に事情を聴いたところ「間違いない」と動画撮影に関わった事を認めている。

 この部分は仕方がない。暴力をふるっていたのは事実だし、撮影に関与していたのは一応事実なんだからこれは嘘じゃない。しかし問題なのは次の文だ。

加害生徒は保護者から叩かれ、また被害生徒の保護者は「あまり大ごとにしないでほしい」「被害届は出さない」と言っている。

・・・あれ?

 今、一瞬思考が止まった。というのも俺は当初、動画で暴力行為をしている生徒が加害生徒で、叩かれている生徒が被害者だと見ていた。しかし今の親父の話で本当の加害者と被害者は逆で、なのに今文章を読んでみると何故か意味が通じていた。

 でも未だにもやもやしていたから、俺は試しに本来の加害生徒と被害生徒が分かるように文章を直してみる。すると

加害生徒(叩かれている生徒と撮影者)は保護者から叩かれ、また被害生徒(動画で暴力行為をしている生徒)の保護者は「あまり大ごとにしないでほしい」「被害届は出さない」と言っている。

 一瞬タダシは目を背ける。

 い、いや、なんだろう。意味が通じた。もう一度、記事に目を通す。いや、やっぱり意味は通じる。最初は動画で一方的にいじめていた生徒の親が子供を叩き、そして被害生徒の親がなぜか「大ごとにしないでほしい」と言い訳しているように思えた。

 しかし実際は違う。本当は叩かれていた生徒の親が『何で生徒を嵌めるような動画を投稿したんだ』と叩かれ、そして暴力を振るっていた生徒の親が『自分の息子がいじめ加害者のように世間に見られてしまっているからあまり大ごとにしないでほしい』と訴えているようになる。うん、これなら納得いく。親父の話を聞く前は、なぜこの被害者の親は子供がいじめに遭っているのに「大ごとにしないでほしい」「被害届は出さない」などと子供のいじめをなかった事にするんだろうと思っていたけど、これなら親父の言い分と合致する。いやしかし・・・。

「・・・じゃあ、次の文章は?」

○○校長は「いじめではない」と発言している。

 最早、いじめ自殺では必ずと言っても良いほど目にする『いじめではない』という言葉。この言葉があるせいで世間の皆は学校が隠ぺいしているという風に捉えてしまっている。だが俺は親父の事を信じて、これが一体どういう意味なのか考える。そしてある結論にたどり着く。

「親父・・・これってもしかして『(動画で暴力行為を行っている生徒による)いじめではない』の略文か?」

「ああ、その通りだ。俺も記事を見た時には驚いたよ。校長は『○○君(動画で暴力をふるっていた生徒の名前)によるいじめではない』と言っていたのに、記事には『いじめではない』という文言に省略されていた。これだと学校がいじめを隠ぺいしていると思われても仕方がない」

なんて事だ。つまり今までの話をまとめると、以下のように記事が添削される。

○○県立中の中学生がネット上に生徒に暴行を加える動画がネット上に流出。

動画には1人の生徒がもう一方の生徒に一方的に暴行を加え、もう1名がその2人を撮影していた。ネットではこの動画が拡散し、炎上している。AA中学の○○校長によると、この動画に写っている生徒2名と撮影している1名に事情を聴いたところ、一方的に殴られている生徒と撮影者は共謀し、生徒を挑発して、反撃した所を撮影、ネット上に投稿した。生徒2名は「間違いない」と動画撮影に関わった事を認めている。

加害生徒(叩かれている生徒と撮影者)は保護者から叩かれ、また被害生徒(動画で暴力行為をしている生徒)の保護者は「あまり大ごとにしないでほしい」「被害届は出さない」と言っている。

○○校長は「いじめではない」と発言している。

 という事になる。これが事実なら、メディアの連中は真実を知りながらもあえて、真実を報道せず、語弊のある記事を作った事になる。もしそれが本当なら今まで見てきた『いじめではない』と書かれたいじめ自殺記事の意味が根底から覆される事になる。しかし・・・

「いや、待てよ!じゃあ、その動画流出事件から1か月後のこの自殺事件は何なんだよ?」

 ○○県立中学2年の男子生徒(14)が自殺したとして、生徒の通っていた学校の校長らが記者会見した。

発表によると自殺した生徒は先月いじめ動画に写っていた生徒だというのが分かった。しかしその後の調査でその生徒は複数の生徒から暴力を振るわれていたと発表した。

また関係者の話によると自殺した生徒は亡くなる前日、複数の生徒から無視された上、水をかけられ、着替えているところを複数の人によって服を奪われたと話している。

いじめをしたとされる生徒達は「いじめているつもりはなかった」と言っており、校長は「なぜ自殺したのか分からない」と話し「いじめによる自殺ではない」と述べた。これら情報を受け、学校側は第三者委員会を設置して、自殺した男性生徒に対しての自殺の原因について詳しく調査する方針です。

「これを見る限り、動画以外でも複数の生徒から、水をかけたられたり、服を奪われたなど酷いいじめに遭ったというのが分かる。にもかかわらず、学校はいじめによる自殺を認めず、隠蔽紛いな事をしようとしている。親父はこれもファクトニュースだっていうのか?」

「ああ、この記事を見た時にはゾッとしたよ。今まで俺が信じてきたいじめ自殺の記事がもしかしたら間違っていたのかもと思えるような内容になっているのだからな」

「・・・説明してくれ」

「まず1つの真実として、水をかけたられたり、服を奪われたと書かれているが、学校ではそんな事は一切起こっていない。それはある人物の過剰な表現を使った嘘だ」

「ある人物って誰だよ」

「・・・自殺した生徒の母親だ」

「え?」

「分かりづらいかもしれないが、もし俺なりにこの記事を添削するとこうなる」

 ○○県立中学2年の男子生徒(14)が自殺したとして、生徒の通っていた学校の校長らが記者会見した。

発表によると自殺した生徒は複数の生徒から暴力を振るわれていたと発表した。(その理由として当時、自殺した生徒の体からは異臭が放っており、複数の生徒は近寄らないで欲しいという理由からその子に暴力を振るっていたというのが分かった。そして異臭を放つ原因は、その生徒の母親が秋休みの間、一度も生徒を風呂に入らせない事による異臭だと分かり、生徒は母親によるネグレクトを受けていたことが判明した)また先月には自殺した生徒は先月発覚した暴行動画に写っている生徒の1人であり、自殺との関連がないか調べている。

また関係者(自殺した生徒の母親)の話によると自殺した生徒は亡くなる前日、複数の生徒から無視された上、水をかけられ、着替えているところを複数の人によって服を奪われたと話している。

(これに対し学校側は、亡くなる前日でも生徒は異臭を放っており、母親は世間を騒がせた罰として子供の服を1ヶ月もの間、洗濯していなかったと亡くなる前の生徒から証言を得た。担任は生徒の体を綺麗にする為、シャワーを使い、生徒が着ていた服は別室で洗う為に、本人の許可を得た上で持ち去り、生徒には別の服を用意した。その為、学校側の見解としては、母親は自分の虐待行為を隠すつもりで『シャワーを浴びた』事を『水をかけられ』と話し『代わりの服を用意した』事を『服を奪った』と過剰表現していると発表した)

いじめをしたとされる生徒達は「いじめているつもりはなかった」と言っており、校長は「なぜ自殺したのか分からない」と話し「いじめが原因ではない」と述べた。これら情報を受け、学校側は第三者委員会を設置して、自殺した男性生徒に対しての自殺の原因について詳しく調査する方針です。

 ・・・嘘だろ。これだといじめで自殺したというより、母親のネグレクトに悲観して自殺した線が強くなってくる。更に今まで隠ぺいだと思われていた学校も、証拠がないから、証明する事が出来ないという見方も出来る。俺は、いや世間はそんな母親の証言を真実のように書いているメディアに騙されていた事になる。・・・いやでも。

「いや、でも、もしそれが本当ならこの校長先生は何で『複数の生徒から暴力を振るわれていた』と言ったんだ?正直、そんな言い回しなんかしなければ、そんなに疑う事なんてなかっただろうし」

「それは記者とのやり取りで

「複数の生徒が『近寄るな』と手を振り払ったようですが、それは複数の生徒から暴力を振るわれていた?という事ですか?」

「そういう事になってしまうのだと思います」

って言ったからだと思う」

「はぁ!?じゃあ『複数の生徒から暴力を振るわれていたと発表』という部分は、メディアの質問に肯定したからという意味なのか!?いや、でも親父、親父のとこの学校は前回のいじめ動画で『いじめではない』って言うのがファクトニュースだって事は知っていたんだろ?じゃあ、何でまた1ヶ月後のこの記者会見でも『いじめが原因ではない』なんて言葉を使ったんだよ?」

「では校長先生、子供の自殺事件なので是非訊いておきたい質問がございます。今回の自殺は『いじめが原因』ですが?それとも『いじめが原因ではない』ですか?』」

「なんて質問されたら、どう答える?」

「そ、そりゃ、いじめが自殺の原因ではないって、いや違う!答えなきゃいいのでは?」

「そうしたよ。そしたら「何で答えないのですか!?また学校はいじめを隠ぺいするのでしょうか?」と矢継ぎ早に他の記者から質問されたよ。ただそれでも校長先生は頑張っていたのだが、色々と別の質問をされているうちに「保護者集会では何と説明するつもりでしょうか?」と質問されてついうっかり『自殺は母親の虐待が原因で、いじめが原因ではないって言うつもりですよ』って言ってしまったんだよ」

「な、なんて事だ。ただそれは校長先生のミス・・・いや、それでも色んな質問をしていれば嫌でも色んな言葉でも使うと思うし・・・正直、時間の問題だったのかもしれないな。いやでも今でも信じられねぇ。って言うのか、メディアによる悪意のある編集なら、何でそれを言わないんだよ?」

「それをどうやって伝えるんだ?いいか?相手は社会全体に情報を届ける報道機関だぞ?俺のような一担任の情報拡散力なんてたかが知れている。更に俺はいじめを隠ぺいしたとされる学校の先生だ。全国の人達に俺の話を信じてくれるわけないだろ?」

「・・・それはそうだが」

「それに俺は公務員だ。個人情報保護法により生徒の名前や住所などは公表してはいけない立場にある。つまり詳細を説明したくても説明できない立場なんだ。仮にもし発表でもしてしまったら、教育委員会から指摘を受け、社会的信用を失い、ますます俺の言い分を信じてくれなくなるだろうな」

 嘘だ!!タダシは親父の事を信じつつも、親父の言い分が間違っていると信じたかった。というのもそれが真実であれば、今まで学校の隠ぺいとして見てきたモノが、本当はメディアによる悪意のある報道になってしまう。俺、いや世間が今まで間違った形で叩いてきた事になる。そんなの信じられるか!!

 タダシは持っていたスマホで今まで出ていた”いじめ自殺”の記事を見まくる。今回の反省として何で学校が『いじめではない』という言葉を使うのか、その理由を訊かず、遺族側の言い分だけ訊いて、学校を一方的に悪者扱いしていたのが原因だ。だから間違った認識を正す為にも、ちゃんと学校側が何故『いじめではない』と言ったのか?その記事を探す事にした。

 しかし不思議な事にどの記事も”この時期に、この学校で、生徒が自殺した”と事実だけ書いていて、最後の締めとして『いじめではない』と書かれているものばっかりだ。つまり学校が何で『いじめではない』という言葉を使うのか?その理由が書かれていない。そのせいで、親父の今回の事件が特別で、他の事件は本当の隠蔽事件だったのかどうか判断出来ない。これじゃあ、今までのいじめ自殺は、本当は学校の隠蔽というよりもメディアによる印象操作で、いじめ自殺の遺族であっても『いじめではない』と隠蔽する教師のようになってしまう。

 しかしそんなメディア全体が『いじめではない』と誤解を招くような事をするか?いや、でも実際、教育業界全体が『いじめでは無い』と一律して自殺を隠ぺいしているのであれば、今更1つの機関、つまりメディア業界全体が隠蔽をしていないって言うのも逆に変な話だ。だからとりあえずメディアが嘘をついていないと言い張るのは止め、とりあえず親父の話を信じる事にした。

「国民に直訴が無理なら法廷で勝負するしかない。親父はこれからメディアを訴えるんだろ?」

「・・・いいや、メディアを訴える事は出来ない」

「なぜ?」

「いいか?これは確かにお前らに語弊を与える記事と言っても過言ではない。しかし弁護士の話によると実際にバッシングをしているのはメディアではなく、世間の方であり、嘘をついていないのに社会が勝手に勘違いしてバッシングしている事になる。つまりメディアは嘘をついているわけではないから、罪がなく、どちらかと言えば、勘違いした国民の方を訴えるべきという事になるんだよ!!」

「なんて事だ。つ、つまりメディアは『いじめではない』と分かった上でこんな記事を書き、更に罪から逃れられてるってわけか!?どうしてメディアの連中はこんな誤解を招くような記事を書いているんだよ!!」

なぜメディアは『いじめではない』と記事にするのだろうか?

続き↓

2章 いじめと自殺との因果関係を証明出来ない人の例