パワハラと指導の違いを心得たい人の例

パワハラと指導の違いは一体なんだろうか?

 新しい部下を持ったが、注意する事が多く、そのせいで『そういえばパワハラと指導の違いって何なんだ?』と部下の指導の仕方に疑問視する人もいると思います。パワハラについて調べてみても『相手を不快にさせる行為』と書かれているだけで、指導も相手を不快にさせる行為である以上、パワハラと指導の区別が出来なくて困る方もいると思います。

 その為、今後部下を厳しく指導する場合、一体どんな事に気を付ければ良いのか?ここでは実際にミスの多い部下を持つようになり、今後の指導について相談している上司の視点で、パワハラと指導の違いについて説明したいと思います。

パワハラと指導の違いとは?

「なに!パワハラと指導の違いが分からないだって?」

「はい、最近配属された部下がどうも不器用で、仕事中よくミスをするんです。なので私なりに注意しているのですが、時折『そう言えばパワハラと指導って一体何が違うんだ?』と迷ってしまうんです。

 部下は『自分が悪い』と思ってくれていますが、四六時中注意しているので、まぁ、精神的に追い詰めているのでは?と思ってなりません。一体、パワハラと指導ってどんな違いがあるのか?今後、部下を正しく指導する上で心得ておきたいのですが、何か良い方法はないでしょうか?」

「まぁ、部下の中には何でもかんでもパワハラだと訴えるやつもいるから気持ちも分からなくはない。ただ俺から言わせてもらえば、じゃあ、注意しないと問題をそのまま放置する事になるんだぞ。そのミスが祟って、今はお前の手で対処出来ても、問題が深刻化してしまえば、この会社内だけでなく、クライアントにも迷惑をかける事になる。だから注意するというのは部下を教育する上では必要な事なんだぞ。それは分かっているな?」

「はい、それは分かっています。しかしパワハラだと思われて、それでまぁ、仮に私が訴えられた場合、作業進捗が滞る事になりえませんか?無論、私の代わりを・・・何とか見つけて立て直すとは思いますが、パワハラだと訴えられた場合のリスクも無視出来ないなと思いまして」

「少なからず、パワハラのリスクを極力減らしたいのであれば、お前がどんな事で、どんな風に注意しているのか?その内容によって決まる。例えばお前の部下が何でもかんでも『パワハラだ』と訴えても、ウチの会社の場合、監査が入って『一体どんなパワハラをしたのか?』を調査するはずだ。もしそこで質問され、お前がパワハラではなく、注意するのに妥当な指導と判断されれば問題が落ち着く。だからやっぱりお前が一体どんな事に対して怒り、そしてどんな風に注意したか?それが焦点になると思うぞ」

「私がよく怒るのは部下のテストの段取りの不備が大半です。我々が開発しているシステムの動作確認を行っているのですが、部下には業務内容の理解に努める為に、先ずテストを行い、システムの動かし方を心得て貰おうと思い、やらせています。」

「では具体的にどんなミスをしているんだ?」

「システムの動作確認をする為に、別のデータベースを接続して、間違ったデータでテストをしてしまったり、撮るべき画面を間違っていたりなど、まぁ、テストのやり直しが多く、折角テストをしたのに、また同じテストをする時間を設けないといけなくて、それで強く怒っています」

「なるほど、何となくだがお前が何で強くいってしまうのか分かった。それでお前はどんな風に注意しているんだ?」

「主に『何でこんなミスをしたのか?』その原因を探りながら対策を再発防止策を検討しています。画面を正しく動かす動作なので、どのデータベースに繋がれていたか心得てなかったり、また画面の動作確認の際、遷移の仕方が分からなくて違う画面を見てしまうという事がありました。まぁ、その度に直すのですが、また似たようなテストをする際、『ああ、忘れていた』という事が多くて、まぁ、同じミスを繰り返す事が起こっているのですね」

「・・・話を聞く限り、お前はちゃんと何で間違えたのか探り、その上で厳しく接している。正直、怒る上では妥当な指導だと俺は思っているぞ」

「そうなんでしょうか?」

「いいか、パワハラではない指導というのは主にミスをした場合、何でこんなミスが起きたのか?原因根絶の為に叱ったのであれば良いと思っている。お前は部下のミスに対し、再発防止の原因を探り、そしてそれが部下の業務内容の理解不足だと突き止め、それに対し、ちゃんと指導している。ただ部下は似た業務をその後やらせても間違えてしまい、その度に同じ間違いを繰り返すと為、前回より強く叱っている。なら仮に部下が『パワハラだ』と訴えたとしても『いや、お前が同じミスを繰り返しているから強い口調で言っているだけだろ?』となり、お前は無罪になると思うぞ」

指導では無いパワハラとは一体どういうモノか?

「・・・では質問なのですが、指導ではないパワハラとは一体どういうモノなのでしょうか?それが分からなくて、今、部長が話していただいたアドバイスもまだ納得していないじょうたいなのですが・・・」

「俺の同期に鬼塚って奴がいたのだが、そいつの例で説明しよう。

 そいつにも不器用な部下が配属されて、ミスを連発していたのだが、そいつはただ叱るだけで、部下が何でミスをするのか確かめもしなかったんだ」

「え?じゃあ、一体その鬼塚って人は一体どうやって部下が改善すると思っていたのですか?

「よく聞く『厳しくすれば部下は怒られないよう頑張り成長する』と考えていて、まぁ『一度説明したんだから、ミスをしたら部下の責任』とそう捉えてろくに教えていなかったんだ。その結果、同じミスは繰り返すし、それで手戻りが多くなり『何でお前はこんなに役立たずなんだ!!』と部下に強く当たるようになったんだ」

「それって全部部下の責任にしているだけで、結局仕事を成し遂げる事を疎かにしていますよね?要は成果より責任転嫁を優先していると言いますか・・・」

「そう、叱る事は確かに大切だが、その鬼塚って奴は優先順位を間違えた。通常、ミスをしても『では部下が出来るようになる為にはどうするべきか?』それを考えた上で指導する。しかしアイツはただ怒るだけで、部下が何でミスをしたのか?それを考えずにただ責任を押し付けるだけで終えていた。これでは一体どうやって部下は自分で問題を解決すればいいんだ?と監査の人達に追及されて怒られていたよ」

「なるほど、要はその指導が今後同じミスを出さない為の指導になっていたかどうか、それがパワハラと指導の境目になるって事なんですね?」

「そう、世間では強く叱る事をパワハラになってしまうと指摘する人もいるが、ウチの会社の場合、成果を上げる為に必要な処置だったかどうか総合的に判断し、パワハラかどうか判断される。

 まぁ、ウチの会社ではなく、もしお前の部下が労働基準監督署に駆け込んで、パワハラだと訴えたらどうなるのか?それは分からない。俺の聞いた話では、部下がうつ病診断書を発行し、それを持って労働基準監督署に行ったら事件化されて、その上司に処罰が下るという話を聞いた事がある」

「うつ病診断書って、確か診察しただけで発行されると聞いた事があります。正直、発行のしやすさから、思い込みの激しい人だと、直ぐに発行され、会社の責任問題になりやすいという印象があるのですが、どうなのでしょうか?」

「その場合、大抵は大ごとになる前に示談か和解に持っていくだろうな。ただお前の処遇は分からない。交渉をスムーズに進める目的で『君をパワハラした上司は異動、または降格した』と言う為に厳しい処罰を下すかもしれん。最近ではハラスメント保険というのがあって、まぁ、裁判をする為に必要な費用を保険会社が立て替えてくれる保険だ。そのせいで裁判費用を気にせず訴える事が容易になっている為、その場合、お前には悪いが向こうの要求を呑むしかないだろうな」

「それはそれで怖いですね」

「ただ言わせてもらうが、ビジネスというのは実力主義だ。だから異動や降格の場合、ほとぼりが冷めたら元に戻すという手もある。だからもし仮にそんな被害妄想の激しい部下が来てしまった場合、仮に訴えられたとしてもお前が『この人は今後会社を動かす上で必要だ』と会社が思ってくれていれば、時期を見計らって良いポジションに戻す事をするはずだ」

「・・・今のお話を聞いて、こちらに非がなくても相手によってパワハラ扱いになってしまう事は分かりました。その場合、運が悪かったと思って、自己都合退職した場合の考慮した方が良いのでしょうか?」

「1つだけの打開策として味方になってくれる社員がいれくれれば話が変わってくると思うぞ。仮に訴えられても『本当にそんな事が起こったのか?』調査されるはずだ。もしお前に対し、有利な証言をしてくれる社員がいれば判決は全然変わってくるし、運が悪くても復帰を推奨する運動が起こるだろう。だから、まぁ、出戻りや自己都合退職も1つの手だが、他の人から助けてもらえるほどの存在になっているのも1つの手だと思うぞ」

パワハラと指導をはき違えるとどうなるか?

「なるほど、良く分かりました。では今後、まぁ、他の人から助けてもらえるような上司になれるよう頑張りたいと思います」

「折角だ。昨今パワハラ問題が結構あげられている事から、パワハラ問題についてもう少し話しておこう。お前は知らないかもしれないが、実はパワハラではない指導というのは、実は以外に難しいんだよ」

「・・・どういう意味でしょうか?私は、その鬼塚のようにただ部下に責任を押し付けるような指導をしないつもりですが?」

「パワハラというのは言い方を変えれば教育上のミスなんだよ。分かりやすく言えばお前が仮に部下に間違った指示を出してしまい、お前の指示が原因なのに『何で間違えたんだ!!』みたいになれば、それはパワハラになってしまう。だからお前がそんなミスをしないよう、教育上で誰もがしそうなパワハラまがいな事を心得ておく事がある。だからその典型例を教えておこう。

 厚生労働省によるとパワハラは大きく分けて6つある。

① 暴行や傷害などの身体的な攻撃

② 脅迫や侮辱などの精神的な攻撃

③ 仲間外れや無視などの人間関係からの切り離し

④ 仕事を与えなかったり、レベルの低い仕事をやらせる事

⑤ 過剰な業務の要求や、やり方の強要

⑥ 私的な事に口出しする事

 ①の場合、まぁ、犯罪だから今回は話としては除外しよう。ただ世の中には②のように『役立たず』『おかしい!!』と暴言を平気で吐く人がいる。まぁ、さっきも説明したけど『厳しく接すればいずれ成長する』みたいな考えを持っていて、お前のように原因究明を理性的に考える事を怠っている人がいる。まぁ、感情的になって相手にただ暴言を吐くだけでは退職や訴訟のリスクを高めるだけ。叱る場合には相手に『こうあるべきだ!』と説得し、相手を納得させるニュアンスを含めて注意しないといけない。

 実際、鬼塚も自分の部下に『ちげえっって言ったんだろ!』『そんな事も分からないの?』と言って逐一罵声や侮辱を部下に浴びせていた。まぁ、相手のミスなのだから責めたい気持ちは分かるが、責めるだけでは相手の反発心を招く。実際、鬼塚の部下は『これで成長してもコイツが喜ぶだけ。そして成長した事を理由に今までと変わらないやり方をしてくるだろうから、転職しよう』と考えてしまう。鬼塚の部下の退職理由はそれが目立った。

 だから普通は『アメと鞭』なんだ。要は叱るけど、それを上回る『この人の下で働いていきたい』と思わせるような求心力が必要になってくる。俺の場合、この業界で生き残っていく為の知恵なんだけど、まぁ、どんなモノかは人によって違うが『仕事以外の事でも相談出来る』『おかしいと思った事でもちゃんと聞いてくれる』など、部下の不満に対し、正しく対処出来るかが1つの答えだと思っている。

 しかし鬼塚の奴は『はぁ?何か文句があるのなら結果を出してから言え』と言って、部下の言い分を何も訊かなかった。その結果、職場環境や仕事のやり方の改善点も訊いてくれないわけだから、まぁ、部下はミスを普通にするし、仕事のやりづらさは残り続ける。そして鬼塚の奴は毎度『部下のせい』と言って、一向に部下の責任というスタンスを取っていたため、そのうち『アイツはダメだ。仕事を渡さない方が良い』と③④のような事が起こったんだ。

 まぁ、『信用出来ない奴に仕事を渡さない』と考える人もいるけど、人手不足のこの時代、中々代わりの人を見つけるのは難しい。だから仕事が出来ないから言って本当に渡さないと仕事が滞ったり、その人は何もしなくても良い事になる。実際、辞めた人の1人が『本当に仕事を渡さなかったから転職に向けて、必要な勉強をした』と、まぁ、会社の生産性より、自分のスキルアップの為に時間を使ってたんだ。これでは人材の無駄遣いだ。

 挙句の果て、仕事を回さなかったせいで仕事が溜まり、土壇場になって一気に仕事を回さざる得なくなり、⑤のように過剰な仕事量を強要する事が起こった。鬼塚曰く『アイツ自身が招いた結果だ。責任を取れ』と進捗が遅れた事に関しては部下のせいにして、自分のやり方に問題はないと思っていたらしい。正直、現場を混乱させているのはその鬼塚の方だ。

 そして⑥についてなんだが、その後、鬼塚は『お前一体どんな教育を受けてきたわけ?』『高卒?』『低学歴?』など部下のミスの原因は育ちの悪さが原因?と考えるようになった。挙句の果て、部下のプライベートを知る度に『だからお前はダメなんだ』と何かしらいちゃもんをつけてくるようになって、立派な学歴を持っていたとしても『学費が無駄になったな』と結局侮辱してくる。その鬼塚はその部下に仕事を回す立場の場合、反論する事を控えるのに、鬼塚は自分が間違った指導をしているって気づかずに続けていく。」

「今のお話で『誰もがしそうなパワハラまがいな事』の意味が分かりました。要は『部下を成長させたいから厳しく接する』『信用出来ない奴には仕事を回さない』『部下のせい』と教育上あってもおかしくない事柄でも見方を変えれば、自分の教育上の不備が原因になっている。だから部下を教育する上で、どういう注意をすれば部下は成長できるのか?その辺を踏まえて注意すべきって事なんですね」

「更に言えば、自分の行動を振り返る習慣もつけるべきだと思っている。鬼塚って奴も指摘されるまで自分がパワハラをしているなんて気づかなかったんだ。これは『部下を一人前にさせたいから厳しくする』『信用出来ない奴には仕事を渡さない』『私生活に問題があるから仕事でも問題を起こす』みたいに考えていたせいで、自分が叱る事は当然だ。と思っていたらしい。まぁ、一種の正論を振りかざし、自分のやり方を振り返る事をしなかったんだろう。

 もし少しでも鬼塚が『何でこんなに仕事が上手く回らないんだろう?』と考えていれば自分の指導の仕方に問題があると思ったかもしれないし、部下とのコミュニケーションをちゃんとしていれば、自分の教育の仕方に問題があると言われて気づいたかもしれない。

 だから俺自身のパワハラではない指導をするコツとして

・ 仕事自体を上手く動かす

・ 改善点を常に追求し、部下の要望も訊けるようにする。

・ 要は働きやすい環境を作る事が大切だと思っている。

 ではないと最後にはあの鬼塚のように1つの会社を潰す事になりかねんぞ

「え?その鬼塚って人、会社1つ潰したんですか?」

「そうだ、そいつ、部下をうつ病に追いつめた責任として別の子会社に異動させられたんだ。しかしそこでも同じように部下を追いつめるような事をして、離職率はあがるわ、ミスが常に怒りつづけるわ、会社自体が疲弊していったんだ。そして人手不足で仕事が回らなくなって、更に鬼塚に怒られるのが嫌になって、ある部下が責任から逃れる為、データを改ざんし、それが内部告発されて、会社の信用を失い、会社は倒産。鬼塚は責任を取って何処かに消えてしまったらしい」

「なんか、パワハラって放っておけば、会社を倒産させる恐ろしい問題へと発展させる怖いモノなんですね」

「そうだ、だからもしお前が部下を教育する事になったら『この会社で働いてきたい』と思えるような気配りが必要だ。でないと今の時代、SNSで簡単に会社の内部の情報が外に飛ぶから直ぐに会社の不正が表に出やすい。だから部下がせめてお前についていく。せめてそんな風に思われる上司になる事がパワハラ上司にならない1つの方法になると思うぞ」

パワハラではない指導とは具体的にどういうモノのか?

「部長。出来ればお尋ねしたいのですが、そんな部下から慕われる指導って具体的にどんなモノがあるのでしょうか?」

「俺の知る限り、部下に厳しくして効果があるのは、部下が手を抜いていたり、事の深刻さを正しく理解していない時だと思っている。

 例えば世の中にはライバルとの競争に勝つ方法や、客への対応、情報収集などビジネスで結果を出す為のノウハウが山ほどある。しかし全く現実の厳しさを知らない素人からすると『今日はこのくらいでいいや』と言って、まぁ、言われた事だけだったり、自分で勝手に十分だと判断して仕事を終わらせたりする。

 そういう事ではなく、お前は部下の甘い考えに対し『客はお前のこういう部分を見ているぞ』とか、『ライバルはこんな事をしているぞ』とかあらゆる疑問を投げかけて、部下の成長を促す事をしないといけない。人というのはね、自分の事を気にかけてくれる人にはついていきたいと思うはずだ。まぁ、言い方を変えれば『自分を成長させてくれるためにサポートしてくれる』そんな風に思わせる教育がある意味、部下から慕われると思っている。

 上司の役目というのは、確かに部下を成長させる事も1つの目的なんだが、この業界で生き残っていく為の術というモノを伝授させないといけない。その為にもどのように仕事に取り組めば良いのか?その見本にお前はなる必要がある。だから『今後、日本はこうなると思われる。だから俺達の○○業界は今後、このようにしないと大勢の人達が○○になる恐れがある。俺達はビジネスをしているが、一方で社会の何かに貢献する仕事もしているんだ。俺達はそんな社会に貢献出来るような人になる必要がある!』と自分が今後どのように取り組むべきなのかの道筋、それを見せられるようなる事が良いと思うぞ。

スポンサーリンク