『パワハラを理由に退職したら、転職はどのように立ち回れば良いのか?』
転職するとなると大抵は「何で退職したの?」と退職理由について訊かれると思います。こちらに非があるわけでもないのだから、次の転職先は直ぐに見つかるだろうと思っていたら、面接官の中には時に『打たれ弱い』または『前職のパワハラ被害を引きずっていないか?』と疑い、落とす面接官がいます。
事実、パワハラ被害の人の中には上司に怒られた記憶がよみがえり、パニック状態になる人もおり、仕事で支障をきたす場合があります。場合によってはうつ病で長期休暇を取得し、働いていないのに給料を出さないといけない、という事になり、採用を敬遠されてしまう傾向があります。他にもパワハラ被害に遭った言っていても、当人の被害妄想だったり、当人の忍耐が弱くて大袈裟に言っているケースもあります。
その為、パワハラ被害を理由に簡単に転職出来るわけではなく、転職で成功する為には不当なパワハラ被害を受けた事を説明しなければなりません。その為、ここでは実際にパワハラ被害にあった転職希望者と面接する面接官の視点でパワハラ被害に遭った場合の転職方法について説明しております。
パワハラ被害の転職者を相手にする面接官の心情
「パワハラを理由に転職か・・・」
今日、ウチに来た転職希望者の面接担当はこう呟く。パワハラを理由に退職したのだから『酷い上司もいたもんだねぇ』と同情の余地もある。しかしこちらとしてはパワハラ被害者を採用した結果、専門用語の聞き間違い、仕事の段取りの手違いなど、注意される度に過呼吸状態に陥り、仕事が停滞する事が起きた。その結果、周囲の人達は『この人と関わると仕事が滞る』という事で『大丈夫です』と何かと理由をつけて協力を拒む事が起きた。しかし意図的な排除は相手にも伝わり『この職場に居づらい』という事で休職まで追いつめてしまった。その期間は1年半。その間、採用時の契約にあった給料の3分の2を支払続けないといけなくなり、戦力になる前に休職に追いつめられ、更に退職されるという事が起こった。申し訳ないがウチに重度のパワハラ被害者を雇えるほどの労働環境は整っていないし、逆に病状を悪化させる危険性がある。だからパワハラ被害に遭った人には悪いが、仕事に支障が出る程の後遺症がある場合、お断りしようと思っている。
そしてもう1つは妄想被害などパワハラ被害と呼べないモノをパワハラだと誇大主張する人のケースだ。最近、ハラスメント問題が叫ばれるようになり、パワハラもまた声を上げる人が増えている為なのか、この手の人達を良く見かける。ただ俺が担当した事のある人の中には
『私を人のいないところに追いつめて注意してくるんです。誰も助けてくれない所に追いつめて反撃出来ないようにしてくるんです』
上司と二人きりにさせられてどんな事をされたのか?尋ねてみたら『私用で私が16時に出る帰る予定だと知っているのに、向こうは仕事が終わらず、このままだと遅れてしまう』と言っていて、翌日上司が誰もいない休憩室に入ってきて『君ね、私用で帰るんだから、君が原因で仕事を早く切り上げないといけないわけだよね?なら君が責めるのは間違っているよね?』と言ってきて、この人はそれをパワハラだと言ってきたのだ。明らかに注意した上司の方が妥当だと思うのだが、世の中にはパワハラなのか、指導なのか分からない点が多く、面接の段階でそれを判断するのが難しい。
他にも無視されただけでハラスメントという場合もあれば、本当はこの転職者に問題があるのに、パワハラ被害に遭ったと嘘の供述をして採用されようとする輩もいる。だからパワハラ被害にあった転職希望者を採用する場合、『どんなパワハラ被害に遭ったの?』と訊くようにしている。
なぜそんな事をするのか?それは先ず1つの理由として
話している最中にパニック症状を起こさないかどうか見る為だ
転職希望者に対し、辛い記憶を呼び起こすのは忍びないのだが、もし話している最中、泣き出したり、パニック症状を起こすような事があれば、些細な言動で職場でも支障が出る可能性がある。だから精神的な問題を確かめる上では、やはりパワハラ被害に触れても問題がないかを確かめている。
そして2つ目の理由として本当にそのパワハラが辞める程のパワハラだったかどうかを確かめる為にも、具体的な例を知りたい。虚偽のパワハラを見抜く為には本人にパワハラの具体的な実情を話してもらい、矛盾がないかを確かめるしかない。でなければ妄想なのかどうか判断出来ず、間違った形で採用する事になる。当人には申し訳ないがやはり使える人材を採用する立場にある以上、同情で採用を有利にするわけにはいかない。その辺を確かめた上で採用するか決めるとしよう。
パワハラ被害にあっても転職に成功する人の例
『どんなパワハラ被害に遭ったの?』
早速この手の質問をしてみた。すると目の前にいる転職希望者は、主に暴言や執拗な嫌がらせが大半です。と言ってきた。見た限り、話をしてもパニックになる事はなく、普通に返事をしてくる。後遺症の症状は見られない。だがその手の返事だけでは”何でパワハラ被害に遭う事になったのか?”。それを見る事は出来ない。だから次にパワハラ被害を受けた原因について訊いてみる事にした。すると
「上司に完全に嫌われてしまったんです。私がある日、以前上司から指示された内容と違う事をしたいと申し出たんです。しかし『俺が前に言ったやり方でも出来るだろ?』と言われてしまい、それでもと食い下がると『あ、そう。じゃあ、それでやって』と言って機嫌を損ねてしまったんです。それ以降、仕事の指示内容が以前より曖昧になったり、詳しく訊こうとすると『お前そんな事も判断出来ないのか?』と口調が強くなっていました。そしてある日、『お前は俺から仕事貰わないと何も出来ないね』と、嫌われてしまったのかな?と思いました
些細な意見の衝突で上司との関係が悪化したパターンか。今までパワハラ被害に遭った人達と面接をした事があったが、『(パワハラを受ける理由は)何故か分からない』『私の言い分の方が正しい!』など、原因不明だったり、価値観の押し付けによる反発が原因の場合もあった。正直、パワハラ被害の妥当性に関しての判断は難しかったが、今の話を聞く限り、職場であるすれ違いを根に持ち、部下にあたる行動は上司の人間性に問題があるし、それでは部下から意見がいずれでなくなる。到底褒められた事ではない。
ただこれがこの転職者の嘘、という可能性も無くはない。だから信憑性を確かめる為に『パワハラ被害を受けたのなら、何かしら解決しようと努力したんだよね?』と質問してみた。
結局のところ、些細な行き違いは良くある。だから一時的に終わったり、または和解しようと何かしらの手を打つのか確認すべきだと思っている。でなければこの人の一方的な主張の枠から外れず、採用するならこの人の持つ実力のみで判断しようと思っている。
ただ先の質問に対し、転職者はこう答える。
もともと上司から避けようと思っていたのですが、前の会社ではシステムのマニュアルが用意されてなく、経験者である上司に訊かないと分からない状態であった為、避ける事が出来ませんでした。指示が曖昧、矛盾。そして自分が悪いみたいな言いぐさをされる。長く勤めれば勤めるほど指示された言葉増え、仕事がやりづらくなると思い、転職を決意しました。
と述べた。どうやら話を聞く限り、その上司は意見がぶつかった後、指示内容が『あれやって』『これやって』など曖昧な内容になっていたり、更にそれが直前の業務の内容ではなく、2週間以上前の業務だったりする。これを聞く限り、その間、様々な似た業務があったのにもかかわらず、相手が分かるように説明しない上司の方が問題あるし、更に具体的に訊こうとしても『だから前にやったヤツだよ!』と、質問に答えていない。
更に仕事内容にも矛盾が生じている。テストをする際、2重チェックを行おうとしたのに『そんな事しなくて良いから早く提出して』と言ってきて、しかし別のテストにおいては『システムが正しく動く為に1回きりのチェックじゃダメだって分かっているだろ!何やっているんだ!』と言ってくる。つまり指示が矛盾が生じている。そして次の時に2重チェックを行おうとした時『前に早く提出してって言ったよね?同じ間違い起こしている事気づいている?』と言われ、別の業務では『ちゃんとチェックしろよ!もう何度同じ事を繰り返せば気が済むんだ』と自分の過去の指示と矛盾が生じてやり方に違いを出しているのに、それに気づかず、部下のせいにしている。更にそれを指摘すれば『あれとこれとは違う』と言わせ、改善の見込みがないらしい。
転職希望者はこの手のやり取りを受け続けて『このままでは指示内容が多くなる度にすれ違いが多くなるし、更に矛盾が生じてパワハラまがいな事を受ける。ならいっその事別の職場に転職し、そして新しい環境でキャリアを築き上げた方が良い』と思って転職を決意したようだ。
・・・パワハラ被害による転職の妥当性。これは人によって色々とあると思うが、俺なりの考えとして『改善する見込みがなく、逆に悪化していく傾向がある』場合だ。特にこの転職者の場合、上司による曖昧な指示内容で現場を混乱させている事に気づかず、部下のせいにしている。確かにこれだと一緒に仕事をすればするほど、立場が悪くなっているのは目に見えてくる。このまま今の職場にいるより別の職場でキャリアを積んだ方が得策と考えるのは自然だろう。
パワハラ被害を受けて転職を決める人というのは、パワハラ加害者が自分の非を認めないケースが目立ち、それが権限だったり、仕事の渡さない、または過剰業務を送ったりなど、失敗を誘発させるケースが目立つ。だからこんな人の下で働いて見返すよりも、別の現場で、そこで自分を育ててくれた恩として仕事を頑張っていきたいというのが主な転職のキッカケになっていた。
・・・どうやら転職が正解と思えるほどのパワハラを受けていたようだ。ならそろそろ転職希望者のスキルについて訊こうと思うのだが、最後に質問したい。
『なぜ弊社を転職先に選んだのか?』
パワハラ被害に遭わない転職先はどのように見つければ良いのか?
パワハラ被害を受け、転職を決めた事は理解する。しかし気になるのは『何故弊社を次の転職先として選んだのか?』だ。パワハラを理由に転職を決めたのであれば、当然、次の現場はパワハラ被害に遭わなさそうな勤め先を選ぶだろう。果たしてこの人は一体どういった基準で次の勤め先を決めたのか?興味がわき、思わず訊いてしまった。
すると目の前の転職希望者は
「パワハラ被害に遭ったので次は是非ともそんな人がいない企業に・・・と思っていたのですが、社員の性格やパワハラ対策に至っては企業の内部事情なのでリクナビやマイナビからの転職サイトでは分かりませんでした。
ただ転職会議というのがありました。そこには企業を退職した人たちの退職理由が書かれており、その口コミ内容を参考に志望先を決めていきました。事実、
- 有休取得率は高いがその後の休んだ分の残業時間を何処かで埋めないといけない。
- 評価制度はチーム制になっている為、上司が無能であっても上司の管理能力まで評価されてしまう為、個人の実力は評価されない
- 前まで仕事は回っていたのですが、優秀な上司が独立し、現在無機能な状態になっている
などマイナス要素が多い企業だとやりがいがない企業なのかなと分かりましたし、良い情報の場合、
- 社内起業を意識している為か情報共有が出来ている職場です。育児や介護などの福利厚生が揃っている職場である為、話しやすい職場だと思っています。
- 現場はチーム制で実力に応じた先輩社員が配置されており、この現場で働いていく為の実力を間近で見れるのは強みです。私自身、先輩からのノウハウで助かっています。
- 社長が社員の意識改革の為か、実績に応じて年収やボーナスが反映されるようになっています。前の職場では利益追求型の会社だった為、社員を大切にする会社との違いをこの転職で感じております。
とありました。このように労働環境の良し悪しが分かり、更に応募する上で退職した方々の口コミを載せても大丈夫と考えている為なのか、経営に自負がある会社だと思い、この転職サイトに載っている会社を参考に転職先を決めました」
と述べた。確かに転職会議は成果報酬型のサイトで、ウチも社員に嫌われるような労働環境にしているつもりはない。退職する人達はどちらかと言えば社風や入社時に思い描いていたモノとは違うという理由が大半だ。だからウチとしても社風を理解した上で転職してほしいと口コミ系サイトに載せていた。
・・・とりあえず今までの話しぶりから特にパニックになる事なく、普通に話せていたし、パワハラ被害による後遺症は見られない。ならパワハラによる調査はこのくらいにして、今度は当人のスキルについて訊いてみるか。