新卒の志望動機の本音が「お金を稼ぎたい」でも不自然ではありません。ただし、「給料が高いから」だけでは、なぜその会社なのか、入社後に何をするのかが伝わりません。
①収入を重視する背景、②応募先の公式情報で確認した事実、③自分の経験、④入社後の貢献へつなぐと、自分の言葉として説明しやすくなります。
本記事用の架空作例|面接30秒
「私は、成果と成長が評価に反映される環境で、経済的に自立しながら長く働きたいと考えています。御社は採用ページで若手の役割と評価の考え方を公開しており、努力の方向が明確だと感じました。入社後は、まず〇〇業務を正確に身につけ、△△で貢献します。」
本記事用の架空作例|ES約200字
「私が貴社を志望する理由は、成果と成長が評価に反映される環境で、経済的に自立しながら長く貢献したいからです。採用ページで、若手にも〇〇業務を任せ、△△の基準で成長を支援していることを確認しました。大学のゼミでは進捗管理を担当し、遅れの原因を見直して期限内の提出を実現しました。入社後は□□業務を正確に身につけ、周囲と連携しながら改善提案につなげます。」

新卒の志望動機で「お金を稼ぎたい」と考えても不自然ではない
働けば給与を受け取る以上、収入を重視すること自体は不自然ではありません。大切なのは、お金の話を隠すことではなく、応募先を選んだ理由と入社後の行動まで説明することです。
マイナビの「2027年卒大学生就職意識調査」(有効回答37,160人)では、26.6%が「給料の良い会社」を企業選択のポイントに挙げています。
調査対象は、2027年3月卒業見込みの全国の大学3年生・大学院1年生(調査開始時点)です。回答は2項目まで選べる方式です。
「給料の良い会社」の26.6%は「自分のやりたい仕事(職種)ができる会社」の25.5%を上回り、2番目に多い回答でした。ただし過半数ではないため、「多数派」「全員が給料で選ぶ」とは言えません。
「お金だけ」の志望動機が弱く見えやすい主な理由
収入は働く目的の一つになり得ます。それでも「給料が高いから志望しました」で終えると、次の情報が不足します。
- 応募先を選んだ理由:会社名を別の企業へ置き換えても成立するため、企業研究の深さが伝わりません。
- 続けて働く理由:条件が変わったときに、仕事そのものへ関心を持てるのか判断しにくくなります。
- 入社後の貢献:給与を受け取る側の希望だけで、どの仕事を覚え、誰へ価値を返すのかが見えません。
この3点を補えば、収入を重視する理由を無理に消す必要はありません。「給料」を入口にしつつ、仕事・成長・貢献へ話を広げます。
独自調査|新卒採用の企業公式ページ22社を確認
「会社固有の事実はどこにあるのか」を確かめるため、当サイトでは2026年8月10日、9業界22社の新卒募集要項を主に、関連する企業公式の制度ページ・FAQも確認しました。求人媒体、口コミ、まとめサイトは集計に使っていません。
調査対象は業界の偏りを抑えるために目的抽出したもので、日本企業全体を代表する無作為統計ではありません。「公式ページで何を確認すれば、借り物ではない志望動機を作れるか」を調べたものです。
| 確認した項目 | 公式ページで確認できた社数 | 読み方 |
|---|---|---|
| 時間外手当を別途支給 | 11社 / 22社 | 選定した代表コースで、初任給とは別に支給すると明記 |
| 固定残業代を含む | 2社 / 22社 | 選定した代表コースで確認。金額・時間数・超過分を分けて確認 |
| 基本給とは別に、標準年収の理論値へ想定残業を加算 | 1社 / 22社 | アクセンチュア。月額基本給と標準年収を混同しない |
| 代表ページでは固定残業代の扱いを確認できず | 8社 / 22社 | 「制度なし」という意味ではなく、応募コースの最新要項で再確認 |
| 昇給時期または給与決定方針 | 21社 / 22社 | 「年1回」と「何を評価するか」は別の情報 |
| 具体的な評価軸 | 8社 / 22社 | 役割・成果・プロセス・専門性などの公開を確認 |
| 資格取得費・資格手当など | 6社 / 22社 | 未記載は「制度なし」という意味ではない |
資格取得費・資格手当などを確認できた6社は、NEC、イオンリテール、大和ハウス工業、アクセンチュア、テルモ、KDDIです。
ただし、取得費補助、資格手当、部署・職種別支援など制度の種類は同じではなく、全新卒へ一律に適用されるという意味でもありません。
初任給は「金額」より先に内訳を見る
たとえばリクルートの2026年度見込みのエンジニアコースは、月給333,334円のうち75,269円が月35時間相当のグレード手当で、超過分などは規程に基づき追加支給します。
サイバーエージェントの2027年度エンジニアコースは最低年俸504万円ですが、月給制職種では時間外80時間・深夜46時間相当の固定残業代を含み、超過分は別途支給すると記載しています。
一方、KDDIの2027年度募集要項では、ベース初任給を学士313,000円~としています。
ただし、入社コースと学位・専攻が一致しない場合、および「ビジネスインキュベーション」「アカウントコンサル(法人営業)」「パートナーコンサル(代理店営業)」「カスタマーサービス」「OPENコース業務系」は対象外です。
時間外勤務手当は諸手当として別に示されています。数字の大小だけを比べると、基本給・手当・時間数・適用条件の違いを見落とします。
出典:リクルート新卒採用、サイバーエージェント新卒採用、KDDI新卒採用
「昇給年1回」だけでは、努力の方向は分からない
22社中21社では昇給時期か給与決定の考え方を確認できました。給与決定・改定に結びつく役割・成果・プロセスなどの具体的な評価軸まで一般公開ページで確認できたのは8社でした。
対象はソニーグループ、富士通、NEC、みずほフィナンシャルグループ、ファーストリテイリング、パーソルキャリア、アクセンチュア、サイバーエージェントです。初任給の一時加算だけは算入していません。
具体的な基準が公開されていなければ、ないと決めつけず説明会で質問します。公式ページにない情報を「若手でも成果次第で必ず高収入」などと推測して志望動機へ入れてはいけません。
公式ページで確認する6項目
- 月給の内訳:基本給、固定的手当、地域手当を分ける。
- 固定残業代:金額、時間数、超過分の扱いを確認する。
- 給与改定:年何回かだけでなく、役割・成果・行動の何を評価するかを見る。
- 初期配属:コースで確約されるか、会社判断か、最初に担う仕事は何かを見る。
- 勤務地と生活費:転勤範囲、地域手当、住宅支援も含めて考える。
- 資格支援:受験料、教材費、合格報奨、資格手当のどれかを確認する。
調査方法・対象22社の公式出典を開く
製造、IT・通信、金融、運輸、小売・食品、建設、人材・コンサル、医薬・医療、エネルギーから、公式新卒採用情報を一般公開する企業を目的抽出しました。
4年制大学卒の代表コースを1社1件選び、初任給、昇給・評価、固定残業代、資格・学習支援、初期配属・仕事内容を確認しました。
- 日立製作所
- ソニーグループ
- 富士通
- NEC
- NTTデータ
- みずほフィナンシャルグループ
- 日本航空
- イオンリテール
- ファーストリテイリング
- 味の素
- サントリーホールディングス
- 鹿島建設
- 大和ハウス工業
- パーソルキャリア
- リクルート
- アクセンチュア
- 武田薬品工業
- アステラス製薬
- テルモ
- 関西電力
- KDDI
- サイバーエージェント
集計で参照した補足の企業公式ページ
- ソニーグループ|研修・能力開発
- NEC|採用コース・選考
- NTTデータ|人財育成
- みずほフィナンシャルグループ|採用FAQ
- 日本航空|追加募集要項
- 味の素|職種紹介
- 大和ハウス工業|人財育成制度
- パーソルキャリア|評価・制度
- アクセンチュア|採用FAQ
- アクセンチュア|福利厚生・給与方針
- アステラス製薬|人材育成・キャリア
- 関西電力|職種・事業領域
- KDDI|募集コース
- KDDI|資格取得支援
調査は無作為抽出ではありません。一般公開ページに記載がない項目は「制度なし」ではなく「確認できず」としました。年度、職種、学位、勤務地で条件は変わるため、応募時は本人が最新要項を再確認してください。
「お金を稼ぎたい」を新卒の志望動機へ変える4ステップ
- 収入を重視する背景を一段掘る
経済的な自立、奨学金の返還、家族への責任、成果を数字で確かめたいなど、自分の理由を一つ選びます。 - 応募先の公式情報を一つ確認する
仕事内容、初期配属、評価の考え方、研修、資格支援など、応募する年度・コースの事実を使います。 - 自分の経験を一つ結ぶ
アルバイト、ゼミ、部活動、資格学習など、実際に継続・改善・協働した場面を選びます。 - 入社後最初の貢献で結ぶ
「成長したい」で終えず、募集職種で最初に覚える仕事と、誰へどう役立つかを言います。
公式ページに書いていないことは説明会で聞く
- 掲載月給のうち、基本給と固定的な手当の内訳を教えてください。
- 固定残業代がある場合、何時間・いくら分で、超過分はどう支給されますか。
- 新卒1~3年目の給与改定では、どの役割・成果・行動が評価対象になりますか。
- 希望コースと初期配属の関係、決定時期・方法を教えてください。
- 資格支援の対象、受験料・教材費・合格条件・返還条件を教えてください。
- 採用ページにある制度を、入社1~3年目で利用した例を教えてください。
説明会で聞いた内容を使う場合は、日時と回答をメモしておきます。「説明会で〇〇と伺った」と根拠を示せるためです。
新卒向けの状況別作例
以下はすべて本記事用に作成した架空の作例です。実在企業の制度や実在学生の経験を示すものではありません。文章をそのまま写さず、自分が確認した事実へ置き換えてください。面接では「御社」、ESでは「貴社」を使います。
経済的に自立したい場合
奨学金を返還したい場合
営業職で成果評価を重視する場合
IT・技術職で成長と収入を結びつける場合
NG例と添削|「給料の話」を「この会社の話」へ変える
NG例
「私が御社を志望した理由は、給料が高く、安定して稼げると思ったからです。お金を稼いで安定した生活を送りたいので、一生懸命頑張ります。」
添削後の架空作例
「自分の収入で生活を安定させ、長く成果を出すことが働く出発点です。御社を志望したのは、〇〇職の1年目の仕事と、成果だけでなく改善過程も見る評価方針が採用ページに示されていたからです。アルバイトで作業手順を見直した経験を生かし、まずは〇〇業務の正確さで貢献します。」
NG例は、会社名を入れ替えても意味が変わりません。添削後は、応募先で確認した事実、自分の経験、最初の貢献が入っています。
下書きができたら、会社名を別の企業へ置き換えて音読してください。違和感なく読めるなら、まだ会社固有の事実が不足しています。
面接で深掘りされたときの答え方
収入の話を含む志望動機は、次のように深掘りされることがあります。答えを丸暗記するのではなく、4ステップで整理した自分の材料から返します。
- 「同じ制度の会社は他にもありますよね」:制度だけでなく、仕事内容・配属・自分の経験との重なりを答えます。
- 「給与だけで会社を選んでいますか」:収入を重視する背景を認めたうえで、仕事・成長・続けやすさも同じ資料で確認したと伝えます。
- 「入社後、どう貢献しますか」:募集職種で最初に担う具体的な仕事と、自分の経験を結びます。
奨学金・家計事情はどこまで話すか
奨学金の返還や家計を支える事情は、話してはいけない本音ではありません。ただし、家族の病気や収入など、選考に不要な私生活の詳細まで説明する必要はありません。
JASSOの令和6年度学生生活調査では、大学学部(昼間部)の奨学金受給者割合は51.1%と推計されています。
この割合は有効回答を基礎にした推計値(参考n=7,461)で、JASSO以外の奨学金と、給付・貸与の双方を含みます。
別のJASSOデータ集では、大学学部在学中に貸与を受け、令和7年3月に貸与を終了した奨学生の1人当たり平均貸与総額は323万円です。平均返還年数15年は、奨学生1人単位ではなく奨学金1件ずつの平均です。
異なる資料・母集団の数字を、ひと続きの同一集計として扱わないでください。
伝える場合は、「返還があるから高い給与が欲しい」で終えず、「返還計画を立てている」「応募先で専門性を身につけ、長く働く」と計画と貢献へつなげます。
保護者の方へ|代筆ではなく「確認役」になる
新卒の志望動機「お金」に関するよくある質問
「生活のためです」と正直に言ってもよいですか
生活のためという本音を隠す必要はありません。ただし、それだけでは応募先を選んだ理由にならないため、公式情報で確認した仕事・配属・評価と入社後の貢献を続けて話します。
正直、「その会社でなければならない理由」がありません
運命的な理由を作る必要はありません。自分が重視する条件と、応募先で確認した事実が重なる点を一つ選びます。それでも固有の事実が見つからない場合は、説明会で質問するか、応募先として本当に合うかを見直します。
初任給が高いことを志望動機に入れてよいですか
金額だけを主理由にはしません。基本給、固定残業代、勤務地、仕事内容、評価の考え方まで確認し、「どの仕事で役割を広げたいか」へつなげます。
例文の経験が自分にはありません
ない経験を作ってはいけません。アルバイト、ゼミ、授業、部活動、資格学習、家庭での役割から、継続したこと・改善したこと・人と協力したことを一つ探します。ES全体の材料が見つからない場合はESが書けない原因別の対処法から整理できます。
まとめ|本音、会社の事実、経験、貢献の4点で伝える
新卒の志望動機で「お金を稼ぎたい」と考えること自体は不自然ではありません。ただし、給料の高さだけでは応募先を選んだ理由や、入社後の行動が伝わりません。
収入を重視する背景 → 応募先の公式情報 → 自分の経験 → 最初の貢献の順に整理します。
企業公式22社の調査で分かったように、初任給の数字は基本給・固定残業代・地域手当などの定義が異なります。金額を比べる前に、応募する年度・コースの内訳と仕事内容を確認してください。
記事の根拠と更新方針
- マイナビ「2027年卒大学生就職意識調査」
- JASSO「令和6年度学生生活調査」
- JASSO「奨学金事業に関するデータ集」
- 企業公式新卒採用ページ・関連する企業公式制度ページ22社(上の折り畳み欄に、集計で参照した全URLを掲載)
企業調査の確認日:2026年8月10日。採用情報は随時変わるため、少なくとも四半期ごと、または次年度募集要項の公開時に再確認します。誤りに気づいた場合はお問い合わせからお知らせください。